PUP 3 ページ3
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バス停に着いても、直ぐに乗ってはいけない。
ベンチに座ってじっとジョンハンを待つ。そんなに遅刻をする人でもないが、予め時間には余裕をもって待ち合わせているため多少の時間のズレに問題はない。
待っている間は朝のやや冷たい空気を吸いながら周りをただ眺めることにしている。
最近は、毎日通りかかっている自転車通学の男の子を見送るのが新たな日課になりつつある。
細い目をギュッとして、風に当たるのが気持ちいいんだろうな、と容易に想像できる顔をしていて、たまに寝癖を爆発させたまま来たり、リュックに付けられているトラのキーホルダーがチャックに噛んでいて半分カバンが空いているところを目撃してほっこりさせてもらっている。
ハムスターのようで可愛いと思っているが、決して他意はない。
「や！A、今日もお利口に待ってたんだなあ、えらいぞ〜」
「うん、ジョンハニが待ってろっていつもうるさく言うから待ってたよ。」
「うるさくとか余計なこと言わなくていいんだよ、返事はありがとーハニくん、大好きだワン、でいい。」
「ありがとー」
「……」
じとっと見られても気にせずふいっと次のバスを確認する。もうすぐに来るので立ち上がってスカートを軽くほろってリュックを背負い直す。
「おまえ、スカート短いんじゃないの？」
「そうかなあ。普通だと思う。」
ヒラヒラとスカートが動くのは可愛いと思うし、周りの子も膝上にはしているから特に疑問は持っていなかった。
「もう少し長くしろ」
「えー」
「返事ははいかイエスかわんだって言ったろ。」
この丈が可愛いのに、とぼそっと呟くと、色気づきやがってこのわんこが！と頭をぐしゃぐしゃにされてしまったので
「ごめんなさいハニくんわんわん〜」
と言いながらスカートを下に引っ張る。怒られたくない私はスカートを折る勇気がなく、上にあげて履いていただけだった。
昔から私のオシャレにうるさかったジョンハンにバレないよう毎日少しずつ上げていたのがついに見つかってしまったか、と落胆しながら下げ、結局元の長さに落ち着くのであった。
小学生の頃、初めて私がショートパンツではなくチュールスカートを履いた時、ジョンハンは似合わないと連呼していた。
かつての私なりに勇気をだしてイメチェンのつもりでオシャレしたスカートを似合わないとバッサリ言い捨てられただけでなく、「そうかな」と笑って流そうとしても何度も言われて傷ついたことを思い出した。
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作者名：あった懐炉 | 作成日時：2024年2月10日 21時
