PUP 17 ( IF STORY ) ページ17
話数が記念すべきSEVENTEENなので番外編
*
( jh side )
「う、んん……」
珍しく静かな朝。いつもはこのくらいの時間に電話がかかってくるはずなのに、今日は無いことに違和感を憶える。
体は勝手に起きるから、もうこのモーニングコールも必要ないと分かっているのに、朝一番に携帯に表示される【わんこ】が愛おしくて、毎日最初に声を聞けることが嬉しくて、やめられないでいる。
まだ寝ているのか、仕方ないので今日は飼い主が起こしてやろう。連絡先からピン留めされているその名前をタップする。
「…………もしもし」
「わ、おはよう。ちょっと変なことがあって混乱してたらかけるの遅れちゃったよね。」
「ホントだよ。おれが起きれなくて遅刻したらどうしてくれんのさ。」
「ご、ごめん……。」
Aが謝った時、電話越しに何故か、くぅーん、という音が小さく聞こえた。
Aは犬を飼っているから別に不思議なことでもないが、変なことがあったという先程の発言から無駄に疑ってしまう。
「なあ、お前……なんか。いや、なんでもない。じゃあ切るぞ。」
やっぱり最後に、きゅぅん、と聞こえた。
しかもかなり近い。一体、なんの音なのか。
この疑問は、バス停に着いた時にすぐに解決する。
「やぁ、それ……なんだよ。」
「？！な、なにが……」
現れたAは珍しくパーカーを着ている。
深くフードを被っているが、頭頂部に謎の膨らみ、
そしてリュックで押付けているものの捲れ上がりそうなスカート。
おい、それはいろいろと危ないんじゃないのか。
きょろきょろととぼけながらフードをくいっと下に持ち続けるA。
「もうなんかあるのは気づいてるから、さっさと見せろ。」
抑える手を無理やり払ってフードを取ると、ぴょこんと飛び出す獣耳。
うん、けも、みみ……？
一瞬付けたものかと思ったが、根元を触ると生えていて、微かにぴくぴくと動いていることから本物であると分かる。
「これ、なに」
「私も分からない……朝起きたら、生えてた。しっぽも。」
困った顔をするAに連動して、耳はしゅんと垂れ下がり、しっぽも元気をなくしている。
落ち込んでいるみたいだからとりあえず慰めようと頭を撫でると、強ばっていた顔がゆるみ、安心したように笑ったAのしっぽが後ろでふりふりと揺れていた。
……くそ、かわいいな。
*
( ご主人様の極意 : 理性を保て。)
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作者名：あった懐炉 | 作成日時：2024年2月10日 21時
