PUP 13 ページ13
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「……A、おれ」
「っ大丈夫？！」
急に手首から手が離されたと思ったら私の方へ倒れかかってくるジョンハン。私より頭一個分ほど大きい彼を支えることはできないと思った私はジョンハンの背中に手を回して抱きしめるような形でなんとか踏ん張ったが、完全に脱力しそうな危険な状態をどうするべきかわからなかった。
そこを救世主が通りかかったのだ。
「あの、大丈夫ですか…？」
「えっハムスターくん」
小声で言ったつもりが彼の耳に届いてしまったようだ。なんと声をかけてくれた親切な人は最近毎朝見かけるトラなのかハムスターなのか分からない彼だった。
「へ？ハムスター？」
「えっと忘れてください。それよりも、この人を支えていただけませんか、バスを待っていたら突然力が抜けてしまったようで…」
「は、はあ。任せてください！」
彼の協力によって無事バスに乗り込むことが出来た。名前はクォン・スニョンというそうで、ひとつ年下なことがわかった。
ジョンハンの呼吸はやや荒く、顔を触ると熱があることが確実にわかる。
昔からそうだ、ジョンハンは具合が悪くなるまでが早い。ちょっと寒い日に薄着をして遊んだらその日の夜には高熱を出すような子供だった。
やけに濡れていた瞳は頭痛がしていたんじゃないか、熱い手首の原因はジョンハンの手のせいだったのか。先程までかかっていた魔法が解けていくようだった。
さっきの…なんだったんだろう。熱のせいでおかしくなっていたのかな。きっとそうだ。
どこかで期待していた私の心にそっと蓋をした。
家まで送ってくれたスニョンくんに今度必ずお礼をすると約束し、連絡先を交換して別れたのだった。
ユン家のチャイムを鳴らすとお母さんが出てきて、「Aちゃんじゃないの、うちの息子がいつもお世話かけてごめんねぇ…。」とジョンハンを受けとり、家に上がらないかと提案してくれたが、さっきまでのジョンハンとの雰囲気を思い出してしまい、断って帰ることにした。
ここまでが、昨日の話だ。
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作者名：あった懐炉 | 作成日時：2024年2月10日 21時
