ジスとタバコ ページ27
｢ジス、ちょっと一服しようよ｣
｢ん？うん｣
部屋で静かにギターを弾くジスにそう声をかけてから二人でベランダに出てタバコに火をつける。
｢あ、ごめんジス、ライター中に置いてきちゃったから火貸して｣
｢いいよ｣
差し出されたのはライター、ではなくタバコを咥えて少し煙たそうなジスの顔。
｢はは、シガレットキス？｣
｢･･･早くつけて｣
｢はいはい｣
無事に火をつけて二人で肺に煙を入れながら何を話す訳でもなく過ごしているとジスがまたギターを弾き始めたのでジッと見つめる
｢ふふ、近所迷惑かな？｣
私の視線に気づいたジスが顔を上げて小さく笑う。
｢大丈夫だよ、多分｣
｢多分じゃ困るんだよ〜( 笑 )｣
私の曖昧な返答に困り顔で笑うとまたギターに目線を戻す。さっきジスを見つめていたのは、咥えタバコをしながらギターを弾く煙たそうな顔があまりに魅力的で。
｢ジスはかっこいいね｣
独り言のように口にすると
｢タバコ吸ってるからでしょ｣
と目線はギターのまま素っ気なく返される
｢確かに私はタバコが好きだけど、それが好きな人と一緒になってたら惹かれるよ｣
｢それはどうも｣
俺の仕事は声が大事だから、とジスが何度も禁煙しようと試みていたのを私が止めているから、今のジスは吸いたくて吸ってるんじゃないんだろうな
｢それに、ジスには大事なZIPPOがあるから｣
｢それもそうだね｣
大事なZIPPOとは、私がジスにあげたもの。ジスは罪悪感から貰ったものを使わずにはいられない性格だから、禁煙を相談されてすぐプレゼントした。
｢でもジス、辞めたいって言ってる割にはタール値下がってないよ｣
｢いくら自分のタバコのタール値下げても、隣でそれだけ吸われたらね｣
｢いいよ、全部私のせいにして｣
｢うん、ヌナが悪いよ｣
禁煙したくてもできないジスにとって私はストレスなんだろう。だからせめて全て私のせいにして
｢ヌナのせいで他のメンバーよりも早くに仕事をやめなきゃいけなくなったら、俺ヌナのこと刺しちゃうかも｣
｢いいよ｣
｢そうなったら最後にもう1度だけヌナへ歌ってあげるよ｣
｢本望だなぁ｣
｢心にもない事言わないで｣
ジスの最大限の皮肉を私は当たり前のように躱す。私からしたらタバコを辞めようとするジスが悪い。
｢どうせ、タバコ辞めても辞めなくてもいつか飽きるくせに｣
｢ジスがタバコ辞めない限りそれはないよ｣
｢先のことは誰にも分からないからね｣
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作者名：Midyu | 作成日時：2017年10月1日 4時
