急募：推しへの優しい接し方【う/ら/た/ぬ/き】 (ページ18)

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夢主side

自分って、こんなにも歪んだ性格をしていたっけ。
恋愛対象であろうとなかろうと、好意を抱いている相手の親切心を無下にして、突き放したりして。
ついにはうらたさんが優しいから悪いんだ、ってあまりにも醜い責任転換なんてして。

夜の冷えた風が、熱くなった目許を少しでも冷やしてくれないだろうか。

「A！」

突然耳に入ってきたその声に驚いた私は、握っていたスマホを落とした。
なんで。なんで、追いかけてきたんですか。

「俺が何をしたのか、教えてほしい。悪かったところはちゃんと直す。」

悪かったところ？そんなものあるはずがない。ただ、私が一方的に自己嫌悪に陥ってうらたさんに酷い態度をとっただけだ。そこにうらたさんの非なんて存在しない。

「うらたさんは、なにも悪くないです。私が勝手に八つ当たりをしただけです。すみません、でした、」

一切振り返らず、背を向けたまま一気に言い切る。
うらたさんの方なんて向けない。罪悪感から逃げているばかりの自分に嗤ってしまう。
最後はもう嗚咽の混ざった声になってしまっていた。仮にも声優の筈なのに。

「そっか。」

コツコツと硬質な音がすぐ後ろまできて、止まった。
落ちたスマホが拾い上げられて、あの大好きな顔が正面に来る。
スマホを握ったままの冷えた掌が、私の掌に重ねられた。

「誰だって辛いことはあるから。その時は俺を頼って」

どこまでこの人は優しいんだろう。迷惑を具現化したような、こんな高校生一人に何故ここまでできるんだろう。

「気遣ってくださって嬉しかったです。なのに、突き放すようなことを言って、本当に、ごめんなさい」

もういいよ、と微かに笑みすら浮かべる、こんな大人に私は将来なれるだろうか。いや、きっとなれない。
涙が滲んだ頬が、うらたさんの綺麗な指でなぞられる。

「何に悩んでるのか、今じゃなくていいから、話せるようになったら聞かせて」

その言葉に私は小さく頷いた。
本心とは全く逆の行動。けれどうらたさんはそれに安心したように、満足そうに笑った。
うらたさん、そのいつかは来ないです。
もう、この感情は心の何処かに押し込んで、消し去ってしまうつもりなので。
うらたさんをもうこれ以上傷つけないように、こんな元凶の感情は無くしてしまおう。