急募：推しへの優しい接し方【う/ら/た/ぬ/き】 (ページ12)

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夢主side

｢うぅ～...怖い...｣

心做しか館内はひんやりとしていて、それが恐怖心を倍増させているように思う。

｢大丈夫｣

私を気遣い前を歩いてくれるうらたさん。
男性の平均よりは小さい背中だけれども、今は小ささなんて微塵も感じなかった。

｢うひゃっ｣

右奥にある本棚の影から出てきたのは血だらけの男性。
これも演出なのはわかっているけれど、怖いものは怖いのだ。

｢近づかないでください無理ですぅうう｣

半泣き状態になりながらうらたさんの背後に隠れて歩く。

｢怖かったら握ってていいから｣

私のビビりようが余程のものだったのか、うらたさんの骨ばった掌が差し伸べられる。
普段なら絶対に握ることなどできないのだが、こんな場面だからか、案外すんなりと握ることができた。
だからと言って緊張がなくなったわけではなく気遣って声をかけてくれるうらたさんにはいつものように素っ気ない返答しかできない。

｢うっわ、センラほんまに怖いの無理なんですって！！！無理無理！！｣

前方から突如聞こえてきた叫び声は誰がどう聞いてもセンラさんのものだ。
そういえばホラゲにビビりまくる配信なんかもあったっけ。
何故あの人はホラーが苦手なくせに私をお化け屋敷に連れ込もうとしたのか。

｢ふふっ｣

｢センラの方がビビってるじゃねーか｣

なんだかんだ言いつつも、うらたさんは取り乱すようなことはしない。時々肩は跳ねているから得意ではないとこは確かなのだろうが恐らく、私が萎縮している為にうらたさんは私にこれ以上恐怖心を与えまいとしているのだろう。
どこまでもできた人だ。

｢出口！｣

漸くこの空間から解放されるという喜びから、なかなかに大きな声が出てしまった。
しまった、と思い横を見るとうらたさんは驚いた顔をしていた。そりゃあ驚きますよね、すみません。

｢遅かったですね｣

先程まで阿鼻叫喚の嵐だったセンラさんは普段の余裕を取り戻したのか、にこやかに笑った。

｢自分は怖がってたくせに｣

小さく呟くと、センラさんは恥ずかしそうに顔を覆った。
可愛らしい1面もあるんだよなぁ、なんて。

｢てかうらたんとAちゃん距離近すぎやないですか！？｣

話を逸らしにきたのは明白であったが、私はそれどころではなかった。
なにしろ、うらたさんも手を繋いだままだったのだ。
驚愕でそのままパッと手を離してしまった。

その時に見たうらたさんの寂しそうな、辛そうな顔はなぜだったのだろう。