私たちに愛はない【灰谷蘭】

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そうして、灰谷蘭離れして約2ヶ月。





就職もして、小さなアパートに住んで、逃げ回ってる。




何からかと聞かれると、親から。






離婚なんて言ったらとてつもなくうるさいから、もう暫くは黙っているつもり。








彼と暮らしていた地域からはできるだけ離れた場所で、且つ、親にバレないようにコソコソと生きる。







灰谷蘭とは、あれから1度も会っていなくて、多分離婚届を出してくれたんだと、思ってる。






もっと話しあった方が良かったのかもしれないとかそんなことも考えたけど、それをしたところで変わらなかったんだろうな、とも思う。








仕事をして、帰って、ご飯を食べて寝て、何かが足りていない気持ちを無視して、過ごす。










｢･･･遅くなっちゃった｣







カツカツとパンプスを鳴らしながら、暗くなった道を1人で歩く。







灰谷蘭との1年間の結婚生活は今の私にとったらまるで夢のよう。




もう一生体験できない、一瞬の恋愛。







あと何ヶ月で未練を捨てられるだろうなぁ、と空を見上げた。





その瞬間だった。








｢Aちゃん｣








ずっと昔に聞いたことがある、気持ちの悪い声。






こういう時、彼が来てくれたりしたらドラマや漫画みたいで素敵な展開なのに、そんなこと当たり前にあるわけない。




私の口元に覆われた白いレースのハンカチとその聞き覚えのある男の声から前に私に付きまとっていた男を思い出した。







あぁそうだ、この声。






そこで、意識がシャットダウンした。










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