私たちに愛はない【灰谷蘭】

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灰谷竜胆が私に何を言わなくても私はこのドアを開けてた。





それは、彼の弟だから。







｢何あったんだよ、は、ちょ、目ェやば｣







何泣いてんの？優しい声でそう聞かれて、情けなくて。





私が悪い。



必要の無い愛を知りたくなった、私が悪い。





ダメだと忠告されて、そんな事にならないと笑った私が、悪い。







｢A？｣



｢灰谷り･･･｣



｢とりあえずフルネームやめない？面白くなる｣



｢笑わないでよぉ･･･｣



｢ごめんて。何？｣







兄の嫁だからか、優しい竜胆に余計に涙が出る。






｢竜胆、私、ダメかも｣



｢だから、何が？！｣



｢あの人が、蘭さんが好き。でも、あの人、だって･･･っ｣



｢一旦落ち着け、大丈夫だから｣







苦しい、やだ。





出会って以来、初めて読んだ名前はどうにも呼び慣れなくて、でも、体に馴染んだ名前。






私は、あの人に、好きだなんて言える立場じゃなくて。







あぁもうやだ、恋愛なんて、一生する気がなかったのに。







昨日も楽しくて、最近は、毎日帰りが楽しみで。




どうして今になって、こんなに近づいてしまったんだろう。









｢･･･離婚しなきゃ｣



｢は？！｣



｢だって、私たちは恋愛したら、だめなの･･･｣








そういう約束なの。





あの人が、なんでこの約束を飲んでくれたのか、はっきりとした理由は知らないけど私達は、利害が一致しないとこうはならなかったから。











互いに踏み込んではいけない私達に、愛はないのに。





愛は一生、芽生えないのに。




私がどれだけ相手を想っても、あの人は、違うのに。









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