episode03.ζ Sculptoris ページ3
「貴方は雪ちゃんの何なんですか」
握られた手を振りほどいて、私はその男性を睨んだ。
「月宮は職場仲間だ」
「…貴方のせいで雪ちゃんは死んだ」
その言葉に男性は、芋虫を潰したように顔を歪ませた。
「私は貴方達公安を一生許しません」
理不尽な怒りなのかもしれない。
こんな事を言ったら雪ちゃんは怒る事も知っていた。
会場を出ようと、出口に向かって歩くと参列者が私を哀れな目で見る。
会場と外の境目が段差になっていて、それに気づかずヒールを引っ掛けて派手にこけてしまった。
鞄の中の物が散らばってしまいそれを直していると茶封筒があることに気づく。
私は会場に並べてある椅子に腰を掛け、茶封筒の封を切った。
Aへ。
ごめん、死んでしまって。
星を観に行けなくてごめんね。
もう俺は痛くないし苦しくないから心配しないで。
Aも苦しまないで、前に進むことを約束して。
月宮雪弥
彼らしいぶっきらぼうな言葉が綺麗な文字で書かれていた。
やっと涙が流れ、私はその手紙を何度も何度も読み返し、前を向いて彼の写真を見る。
もうこの世界のどこにも彼はいないし、二度と声を発している彼に会えない。
私は立ち上がり、外に出て自宅へ帰ろうとすると、俯きながら歩いてせいで誰かにぶつかってしまった。
「ごめんなさい…」
私は頭を下げ、当たった人物の顔を見た。
「いえ、こちらこそすみません。…顔色が悪いですが大丈夫ですか？」
金髪で、碧眼の彼は黒いスーツで喪に服していた。
この人も仕事仲間なのかな…
「大丈夫です。ありがとうございます」
彼の手を見ると、雪ちゃんの好きなキャラクターのキーホルダーが握り締められていた。
「それ…雪ちゃんから貰ったんですか？」
彼は少し笑って頷いた。
「あなたも公安警察ですか？」
「いえ、僕は喫茶店の店員です」
その答えが以外で、喫茶店の店員と雪ちゃんがどんな繋がりがあったのか想像できなくて少し笑ってしまった。
「雪ちゃん行きつけの喫茶店があるなんて知らなかったです」
そんな話をしていると、道を開けてください、との案内があり雪ちゃんの棺が葬儀車の積まれ火葬場に行くみたいだ。
最後に触った雪ちゃんは冷たくて、ほんの1分も最後の時間を過ごせなかった。
私は霊安車をただ眺めることしかできない。
黒く無慈悲な車は私の横を通り過ぎて、街の火葬場に向かった。
ゼータ・スクルプトーリス/波瀾万丈と非凡な運命
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坂竹会長 - 話の最後に、星言葉が書いてあってみたときとても素晴らしいなぁと思いました。出だしから少し切ない感じがしてそこもまたいいです…!更新頑張ってください。花粉の時期ですしお体にはお気をつけて〜(季節の変わり目ですので) 失礼しました_ーд#_ (2019年3月26日 8時) (
レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 読み始めて涙がでたの初めてでした。とてもおもしろいですね、頑張ってください！ (2019年3月19日 19時) (レス) id: 7430509a03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蟻喰 りあ | 作成日時：2019年3月16日 21時
