episode01.κ Piscium ページ1
「また雪ちゃん出張？」
私の彼、月宮 雪弥は警察をしている。
でも、仕事の愚痴や仕事の内容は全然話さない。
「すぐ帰ってくるから心配しないで」
雪ちゃんは天然パーマが少しかかったくるりんとした髪が可愛い。
私と雪ちゃんの大好きなカフェ【Rosemary】。
私達の特等席、窓際の席で夜のデート。
雪ちゃんみたいな甘くて、少し苦いモカが大好きだった。
「雪ちゃん、帰ってきたらどこか行こうよ」
「Aの好きな星を観に行こうよ」
深夜の12:00。
店内のBGMがピアノのクラシックで、目の前には雪ちゃんがいて、コーヒーの優しい匂いに包まれて私は幸せだった。
「約束ね」
いつもの帰ってきてからの約束。
たまに雪ちゃんは出張に行ってしまうから、帰ってきてからの楽しみをいつも作っている。
「約束」
雪ちゃんが小指を差し出した。
ぶっきらぼうな彼だけど、あまり笑わない彼だけど、そんな雪ちゃんが大好きだった。
固くにぎり合った姿がガラスに映って、まるでドラマの一部分のように切り取れそうな瞬間。
△▽△▽△▽△▽△▽△
雪ちゃんが出張に行ってから1週間が経った。
でも、雪ちゃんは帰ってこなかった。
「雪ちゃん遅いな〜」
一人暮らしの部屋の机に置いてある写真立ての中に写っている私と雪ちゃんの写真。
我儘を言ってトロピカルランドに行った時、嫌がる雪ちゃんを説得して撮影してもらった2人の写真がいつまで経っても愛おしい。
ピンポン
「…雪ちゃん！」
そんな事を考えていると、インターホンが鳴って雪ちゃんだと直感して走って玄関のドアを開けた。
でも、そこにいたのは雪ちゃんではない、眼鏡をかけてスーツを着こなしている男性。
雰囲気は少し怖い。
「警視庁公安の風見です」
いきなり警察手帳を突きつけられ、私は頭を下げるしかなかった。
同じマンションの人がその姿に少し驚いていたので、とりあえず家に上がってもらい、お茶を出し、向かい合わせになって座る。
風見さんは私と雪ちゃんの写真を見つめていた。
「あの…私、悪い事でもしましたか？」
「いえ。月宮雪弥の件でお話があります」
雪ちゃんのことを知っている、ということは雪ちゃんの仕事仲間の方ということかな。
「…月宮雪弥が殉職しました」
その言葉を理解するのが難しくて、私は空気も読めず笑った。
嗚呼、早くこの悪夢から覚めますように。
カッパ・ピスキウム/さびしがりやの夢想
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
坂竹会長 - 話の最後に、星言葉が書いてあってみたときとても素晴らしいなぁと思いました。出だしから少し切ない感じがしてそこもまたいいです…!更新頑張ってください。花粉の時期ですしお体にはお気をつけて〜(季節の変わり目ですので) 失礼しました_ーд#_ (2019年3月26日 8時) (
レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 読み始めて涙がでたの初めてでした。とてもおもしろいですね、頑張ってください！ (2019年3月19日 19時) (レス) id: 7430509a03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蟻喰 りあ | 作成日時：2019年3月16日 21時
