霊界の免罪符 ページ32
霊幻が言葉を発してからしばらく沈黙が続く。
それを破ったのは悪霊だった。
「お前らにはできないだろ」
皮肉と悲しみと悔しさ。
それを含んだ実に直球な言葉は、俺の中に火を着けるのは簡単だった。
「……できるさ」
「ハン、嘘ぶっこいてんじゃねえよ」
きっとこいつは、今まで相当な悪行をこなしてきた。
生前も、死後も。
だからこいつの体は邪気によって巨大化したのだと考察できる。
そんな奴が今頃成仏なんてふざけていると、誰もが言うだろう。
けど、それでも。
「お前が、今までの悪行を本気で悔いているのなら」
神様はきっと許してくれる。
じっと、目の前の霊を見つめて何分経ったか。
そいつは小さな笑みをこぼして、呟いた。
「……頼むよ、霊能力者サン」
「あいわかった。任せとけ！」
ポンと自分の胸を一つ叩いてから、ズボンのポケットに手を入れ、
中から紙と筆ペンを取り出す。
ペンの蓋を開け、サラサラと紙に書き込む俺を見て、
霊幻が不思議そうに首を傾げる。
「何書いてんだ？」
「呪符。基本は願い事を書いてお守りとかにするものなんだけど
ある一定の条件を満たせばその場で願いを叶えることができる。
……よし、出来た。
これがお前を縛ってる力を弱めるものだ。千切って」
霊は意味が分からないといった表情のまま、
差し出された呪符をくわえ、首を勢いよく捻って引きちぎった。
「お……おおぉ！」
動けるぞ、と霊は嬉しそうに叫んだ。
首から下は１階にあるため俺達には分からないが、
本人がそう言っているのだから間違いはないだろう。
それを確認した俺は、もう一枚の呪符を霊に差し出した。
「さ、これを千切ればお前は成仏できる。
言い残すことがあるなら千切る前に言っときな」
霊は動かせるようになった両手でそれを受け取ると、
紙に縋りつきながら涙を流した。
「うう……やっと自由になれる。
ありがとよぉ…………」
霊はそう言うと、呪符を引きちぎり
体を光らせながら静かに消えていった。
「……終わったのか？」
「終わった終わった。さ、事務所に戻ってたこ焼き食おうぜ」
「依頼人から報酬もらったらな」
「わーお、霊幻抜け目なーい」
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雨散々(プロフ) - マスヲさん» コメントありがとうございます。私の作品で笑っていただけて何よりです。これからも笑いをとれるように頑張ります(笑) (2017年2月4日 10時) (
レス) id: 2f2c9aedea (このIDを非表示/違反報告)
マスヲ(プロフ) - コメント失礼します。めちゃくちゃ面白かったです！！久々に笑いました(^^)更新頑張ってください！ (2017年2月3日 22時) (レス) id: f55d281746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨散々 | 作成日時：2017年1月20日 19時
