59.もう二度と ページ9
･
｢A｣
阿伏兎の声が聞こえた。
どれくらい、縮まって座っていただろう。
ここは、どこだろう。
その声の方に、顔をゆっくりと向けた。
眉を下げながら、悲しそうに笑う阿伏兎の顔。
私、その顔好きよ。
私が困らせてる時の、仕方ないなぁ、とでも言うような顔。
夢の中だから、そう思って、久しぶりに阿伏兎に笑顔を向けた。
弱りきった私の笑顔に、阿伏兎は更に悲しそうに笑う。
戻ってこいよ
どこに？
俺の所に
戻れるのなら、とっくに戻ってる。
でも、だって、クヨクヨして止まらない。
貴方が私から離れて、私の居場所は貴方の横にはもうなくて。
あなたの隣にいる彼女が、私はすごく苦手なんだ。
でも、それを言うと、あなたは本当に悲しんでしまう。
どうしたら、誰も傷つけないでいられる？
阿伏兎が、私に手を伸ばす。
あぁそうか、私はまだ死んでないんだ。
意識を失いながら、誰かの声を聞いた気がした。
すんでのところで助けられたのか。
その手を取ってしまったら、私はどっちに行くんだろう。
戻るのかな。
戻りたくないな。
もう死にたいな。
でも、あなたの手をとりたいな。
私の人生で誇れるものは、あなたとの思い出だけだよ。
それが無くなれば、私の人生にいいことなんてほとんどなかった。
そんな居場所のなくなった世界に、どうやって戻ればいい？
｢A｣
｢･･･その手を握ったら、もう離さないでいてくれる？｣
でも、もう一度あなたの隣にいられるなら、それはとってもいいな。
もう一度あなたに抱かれて眠れるなら、それはとっても嬉しいな。
何も考えずに、その大きな手に撫でられたい。
大きな胸に抱かれたい。
でも、死ねなかったことに、後悔してしまいそう。
悩みしかないあそこに、戻ったら、また、傷つくかもしれない。
貴方を簡単に、許してあげられないかもしれない。
下げていた視線を、もう一度上げた。
阿伏兎の柔らかい微笑みが、ここだけのものじゃありませんように。
もう一度、彼との時間を過ごせますように。
彼の腕の中で眠れますように。
それが叶うならもう二度と、私達が、離れることがありませんように。
私は阿伏兎に弱いから
私は阿伏兎が最後まで好きだから
私の好きな笑顔をした目の前の彼の手を、恐る恐るとった。
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あい(プロフ) - おもちさん» コメントありがとうございます！予想に反することが出来て嬉しいです！こちらこそ、ご愛読ありがとうございました！ (2021年10月21日 3時) (
レス) id: 7ef5ab0f96 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - 完結おめでとうございます！いつも予想外の面白い展開で楽しみに待ってました！とても面白かったです！ありがとうございました！ (2021年10月19日 21時) (レス) @page32 id: b22efef821 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - うさぎさん» またまたコメントありがとうございます！無事完結させることが出来ました！是非次作も楽しみにしててください！ありがとうございました！ (2021年10月19日 2時) (レス) id: 7ef5ab0f96 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎ(プロフ) - またまたコメント失礼します！ 完結、おめでとうございます(*^o^*)作品更新の通知が来るたびに\(//∇//)\ってなってたので笑 少し寂しいようにも感じますが、これからも主様の作品を読んで、元気を貰おうと思います‼︎ (2021年10月18日 21時) (レス) @page32 id: d1ce909995 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - manaさん» コメントありがとうございます！お待たせしましたー！ (2021年8月30日 23時) (レス) id: 7ef5ab0f96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あい | 作成日時：2021年8月30日 10時
