46.桜 ページ47
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心地のいい風が吹く。
桜の花びらがあちこちに降っていた。
「桜」
「ん？」
いつの間にかどんどん成長していく桜。
あの日、Aと離れてから
こいつを俺なりに一生懸命育てようと誓った。
俺が立派な親に慣れたかと言われたら
そんなわけもないが、子供なんてのは不思議なもんで
いつの間にか勝手に成長してんだ。
目の前にある墓に微笑んだ。
「ままは、どうして死んじゃったの？」
気を利かせた新八と神楽が先に帰った後
髪を団子に結った桜と2人、Aの墓の前にいた。
正装をしているわけでもなく、
いつも通りの格好で、Aに会いに来た。
「病気だよ」
俺の答えに、ふうん、と返事をする桜。
それは、興味がない、とかではなくて
これ以上、何も聞けないだけ。
自分を生んだことによって寿命が縮んだ、
そう言ったことはないけれど、本人はそう思ってたんだ。
「どうしても。お前を生みたかったんだとよ。
俺も、お前が生まれてくれてよかったよ」
だからそんな辛気臭い顔すんな、と頭を撫でる。
少し唇尖がらせる桜。
「何拗ねてんだよ」
「拗ねてないけど…私も、ままと話してみたかったな」
「あいつも、そう思ってたよ。
あいつの話なら、俺がいつでも、どんだけでもしてやら」
「優しい人だった？」
「異常な程な」
「怒ったら怖い？」
「怒らせたら怖いけど」
「けど？」
「怒っても可愛かったな」
「それって惚気？」
「かもな」
「なんか、パパが惚気てるの恥ずかしい」
「…お前、彼氏とかいんの？」
「いないよ」
「もう高校生じゃん？年齢的にはよ」
「…いてほしいの？」
「まさか」
「私に彼氏なんてできたら、みんな凄そう」
「みんなって誰だよ」
「パパとか、新八とか神楽とか、
トシとか、総くんとか、近藤さんとか…みんなはみんなだよ」
「…みんなだな」
誰一人としてその話題につっかかってこないやつはいねぇだろうな。
そろそろ行くかと立ち上がれば
それに気づいて桜も立ち上がった。
もうすぐ夏が来る。
最後にお前と見られなかった桜は、今年もこんなに立派に咲いてるぞ。
お前の望んだとおり、桜はお前が見れなかった歌舞伎町を
色んな馬鹿どもと生きてる。
墓を振り返った時、
笑って俺らを見送るAが一瞬、見えた気がした。
泣きそうになった。
俺はこれからも、お前の分も桜を立派に育てるよ。
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うさきよ - 感動して、涙ぐんでしまいました…。すごく良いお話です！！ (7月27日 1時) (
レス) @page39 id: 55ad19f9cc (このIDを非表示/違反報告)
凛 - とても良かったです！ (2022年12月14日 17時) (レス) @page48 id: 0db889cc25 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - rusa737さん» コメントありがとうございます！面白いけれどやっぱりバッドエンドに当たるので少ない設定ですよね…今後の新作にもまた活用させていただきます！ありがとうございます！ (2021年5月8日 2時) (レス) id: 7ef5ab0f96 (このIDを非表示/違反報告)
rusa737(プロフ) - 通学の電車の中で読んでたんですけどめっちゃ感動しました…！夢主がしぬ設定好きなんですけど余り無いから新鮮かつめっちゃどストライクに刺さりました！！！これからも応援してます…！ (2021年5月7日 17時) (レス) id: 34286106cd (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 常夏さん» コメントありがとうございます！完結もありがとうございました！わーい！桜ちゃんが出てくる回も気になりますよねぇ！良く考えてみます！！ (2021年4月4日 20時) (レス) id: 7ef5ab0f96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あい | 作成日時：2021年3月1日 0時
