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部屋で書類仕事をし始めてから何時間経ったか。


ゴソゴソと聞こえ、そいつが目覚めたことに気がつく。


後ろを振り向いて、そちらを見れば

焦点のあっていない目でそいつは俺を捉えた。


数秒、何かを考える間を置いて、そいつはまた、ヘナっと笑う。



「おはようお巡りさん」


「スッキリしたか」


「うん。これじゃあ健康になっちゃう」


「健康になりたいならよく食べるんだな」


「健康になりたいように聞こえた?」


「・・・さぁな」



凍死するために公園で座り込んでたやつが

まさか健康になりたいわけがない。



「雪、止んだかな」


「そこ、開けてみろ」


「・・・あ、止んでる」



スっと障子を開け、縁側から見える景色に、確かに雪はなかった。


俺だけ吹雪いていたが、今は落ち着いたらしい。



「・・・それじゃあ、お世話になりました」


「まだ取り調べは終わってねぇぞ」


「私に何聞いたって、なんにもわかんないよ」



ケタケタとそう笑って見せる。


何が面白い?

面白いと思って、笑ってんのか?



「この後、どうする気だよ」


「わかんないよ」


「次はどうやって死ぬ気だ?」



凍死を試みる前に、何度も切りつけたんだろう腕をちらりと見た。


自分で自分を傷つける行為で

死ぬほどの傷は付けられなかったんだろう。



「もう体があったまっちゃったせいで凍死はできないなぁ」



お巡りさんのせいだよーと、気の抜けた声出そう抜かす。



「もし何かに追われてんなら、匿ってやる」



俺の真剣な眼差しに気がついたか、

そいつは少し、少しだけ、真面目な顔をした。



「違うよ。もう逃げたって意味が無いことは私が一番わかってるの。

でも、殺されるくらいなら、最期は自分の意思がいい」



初めて聞いた本音はなんの話しをしているのか見えなかったが、

まるで死ぬことは決まっているとでも言うような言い方が、癪に触った。



「人に刺せって言ったくせにか?」


「お巡りさんになら、殺されてもいいと思ったから」



また、ヘラっと笑いそう答える。



「だってお巡りさんはいい人だから。イケメンさんだから」



ヘラりと笑った顔とは対照的に真面目にそう答える。



そうしてそれを最後の言葉に、そいつは俺の前から消えた。


裸足のまま、縁側から。

軽やかに跳んで。


俺は、呆気に取られたまま追いかけられなかった。






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あい(プロフ) - はるさん» コメントありがとうございます、また返信遅れて申し訳ありません。ずっとスランプ状態で更新しておりませんが、必ずきちんと更新させて頂きたいと思っておりますので、もし待っていただけるのなら今後ともよろしくお願いします! (2022年5月7日 23時) (レス) id: ac72e0904e (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - あいさん!あいさんの作品いつも楽しみに読ませていただいています!真選組の女とこの作品はもう更新予定ありませんでしょうか?よかったら教えて欲しいです!!いつも楽しみにしています!! (2022年4月8日 23時) (レス) id: 7cd419164a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あい | 作成日時:2021年10月19日 21時

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