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朝、俺が起きた時、そいつは既に起きていて

寝起きが悪い普段なんて想像もできないほど、元気に笑っていた。



「土方さん!ファッションショーして!」


「・・・」



起きて早々俺に駆け寄り

昨日のことなんざなかったかのように紙袋を振り回す。


近藤さん達に見せてやれ、そう言おうと思ったが

そいつの腫れた目と、空元気と、俺に何も言わせない様子を見て、あぁ、と笑った。



何も言うべきじゃない。


俺たちは恋人じゃない。


俺たちは互いに、好きなやつなんざいねぇし、付き合ったりしない。


決して踏み込めないボーダーラインが、壊せない壁が、互いにあることを知ってる。


あいつは俺の壁に、俺はあいつの壁に気づいてる。


だから昨日のことは、何も言わない。


互いに昨日のことがどんなに幸せな事だったとしても。



「土方さんはどれが一番好き?最後にそれ着る」


「最初に見してくんねぇのかよ」


「最後に着たらそのまま着替えなくて済むでしょ」



タバコを蒸かす俺にももう慣れたように

嫌な顔すらせず、そいつは紙袋を広げる。


どれ?ともう一度聞くそいつのために

一番最初に選んだ、紺色のそれを指さした。


そいつは嬉しそうに微笑んで、それを後ろに置く。


次は?と楽しそうに俺に聞いて

泣きはらした目にも触れさせないくらいのスピードで1人で走る。



「これは、私も素敵だなって思ってて。

あ、この色、簪はこれだったよね」


「A」


「それから、あー、そうこれこれ、これは少し派手すぎじゃないかな」


「A、1回落ち着け。

時間ならあんだろ。そんな急いで話すな。

誰も、おめぇの怖がることはしねぇよ。この時間を、取ったりしねぇから」


「・・・へへ。

・・・優しいこと、言わないで」



悲しい瞳を揺らして

珍しくその瞳に、俺を捉えて、そいつは震えた声でそう言った。





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あい(プロフ) - はるさん» コメントありがとうございます、また返信遅れて申し訳ありません。ずっとスランプ状態で更新しておりませんが、必ずきちんと更新させて頂きたいと思っておりますので、もし待っていただけるのなら今後ともよろしくお願いします! (2022年5月7日 23時) (レス) id: ac72e0904e (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - あいさん!あいさんの作品いつも楽しみに読ませていただいています!真選組の女とこの作品はもう更新予定ありませんでしょうか?よかったら教えて欲しいです!!いつも楽しみにしています!! (2022年4月8日 23時) (レス) id: 7cd419164a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あい | 作成日時:2021年10月19日 21時

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