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「座布団に、座れ」
「・・・あぁ、座布団」
俺の言葉にもう一度立ち上がって座布団の上に正座をする。
「とりあえず、名前」
「・・・知らない人に名前言ったらダメって」
「お巡りさんだっつーの」
「・・・A」
「上は?」
俺の質問に、Aと名乗ったそいつはまた静かになった。
どんな表情といえば正しいか。
困ったような、諦めたような、なんとも言えない表情。
「・・・ない」
「んなやつがいるかよ」
ちゃんと名乗れ、そう言おうとしたが
そいつの微笑みに言葉は出なかった。
何も移さない瞳を細めたその笑みは
とてもじゃないけど可愛らしいとは言えなかった。
「いくつだ」
「・・・20、多分」
自分の年齢すら定かじゃねぇのか。
だいたい20、人生に花を咲かせているだろう時期に、
そんな、全てを悟っちまったような顔すんじゃねぇ。
次の質問に行こうとした時、山崎が
風呂が湧いたと報告しに入ってきた。
このまま根掘り葉掘り聞きたいところだが
今のままだと風邪をひくのがさきだな。
「案内してやれ。待ってる」
「お巡りさんは入らないの?
私のせいで濡れたでしょ」
傘をかたむけてやっていたからか、そう聞いてくるそいつに
俺は大丈夫だからと答える。
そっかぁ、と語尾をのばし
大人しく山崎について行く姿は、濡れてるだけで、ただの女だ。
「訳ありですかィ」
「だろうな」
こんな吹雪の日に、とんだ拾いもんしたもんだ。
A、苗字はない、年齢は多分20歳、か。
どんな人生送りゃ、あんなんになっちまってんだ。
貼り付けられた微笑みと微笑みとは遠く離れた瞳。
面倒事だと思いながら、俺はそいつに惹かれた。
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あい(プロフ) - はるさん» コメントありがとうございます、また返信遅れて申し訳ありません。ずっとスランプ状態で更新しておりませんが、必ずきちんと更新させて頂きたいと思っておりますので、もし待っていただけるのなら今後ともよろしくお願いします! (2022年5月7日 23時) (レス) id: ac72e0904e (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - あいさん!あいさんの作品いつも楽しみに読ませていただいています!真選組の女とこの作品はもう更新予定ありませんでしょうか?よかったら教えて欲しいです!!いつも楽しみにしています!! (2022年4月8日 23時) (レス) id: 7cd419164a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あい | 作成日時:2021年10月19日 21時