22. ページ22
･
｢準備できた！｣
ニコニコと笑いながら食堂に入ってきたそいつに
隊士達はそれぞれ声をかける。
未だに瞳に何も写していないそいつの笑顔も
最近は今までより少し明るくなったような気がする。
｢今日の朝ご飯はー｣
そう言って定位置となった俺の隣に座る。
女官が作った朝飯を前に、そいつは瞳を輝かせる。
土方スペシャルは断固拒否するが
食が細かったこいつがそれなりに食べれるようになった。
と言っても、食べる量は少ないから
女官は予めこいつの飯を少なく用意するが。
うわぁい、そんな声を上げながら
綺麗に箸を持ち、茶碗を持つ。
あんな所にいたのに、ここまで教養が行き届いてるものか？
着物の着方も、食事の仕方もマナーもルールも基本的なことはできている。
それじゃあ生まれがいいとこなのかと聞かれれば
俺はそれすらも知らない。
何より、戸籍すらなかったこいつの育ちが、いいはずがない。
それじゃなぜ？
いつまでもそれを話さねぇそいつ。
明らかにある、俺たちの距離。
気づかねぇふりをするにはわかりやすすぎる。
しかしそいつを苦しめた記憶を
俺が無理やり引き戻すことなんざできねぇ。
｢うめぇか？｣
｢美味しい！特にこの卵巻き｣
ケタケタと笑うそいつに、自分も思わず笑う。
いいんだ、なにも求めてなんかいねぇ。
こいつのそばにい続けることも、こいつを俺のものにすることも
俺は何一つ求めちゃいねぇ。
偽りの笑顔でも、その瞳がなにも映さなくても
自分を傷つける行為を辞められなくてもいい。
ただ、そうやって、楽しいふりでもできてるなら。
おめぇが、少しでも本気で笑えてるなら、それでいい。
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 195人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あい(プロフ) - はるさん» コメントありがとうございます、また返信遅れて申し訳ありません。ずっとスランプ状態で更新しておりませんが、必ずきちんと更新させて頂きたいと思っておりますので、もし待っていただけるのなら今後ともよろしくお願いします！ (2022年5月7日 23時) (
レス) id: ac72e0904e (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - あいさん！あいさんの作品いつも楽しみに読ませていただいています！真選組の女とこの作品はもう更新予定ありませんでしょうか？よかったら教えて欲しいです！！いつも楽しみにしています！！ (2022年4月8日 23時) (レス) id: 7cd419164a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あい | 作成日時：2021年10月19日 21時
