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それから3日ほど経てば、ガキは屯所からいなくなり。


いつも通りの真選組隊士と、1人の死にたがりの女だけが残った。


屯所に空きの部屋はない。


女官も住み込みじゃない。


必然的にそいつは俺の部屋で毎晩呑気に眠る。

いや、隈が消えないのは上手く眠れてねぇからか。



「・・・土方さん」



それから毎晩、そいつは俺に話しかける。


俺は何も言わず、ただそいつにカッターを渡す。

そいつは寝所と俺の仕事スペースとの間の障子を閉め、静かになる。


それを止めたくないわけではない。


体に傷なんてつけるもんじゃねぇ。


でもその行為が今そいつを何より安心させることだと、俺は十分にわかってる。


数分して、俺は昨日までと同じように

障子を静かに開けた。


なんの躊躇もないその手つきは

きっとずっと、それに頼って生きてきたから。



「A」



俺の呼び掛けに、そいつの動きは止まる。



「・・・今日はそこまでにしとけ。

毎晩やってたら切るとこすらなくなるぞ」



後ろからそっと、それを取り上げる。


名残惜しそうなそいつの手が空中で止まる。



「寝れるか?」


「・・・うん」


「・・・嘘だな。毎晩寝れてねぇんだろ」


「・・・そっちこそ、毎晩寝てないよ」


「眩しいか?」


「そうじゃなくて・・・」


「俺もそろそろ寝るから、寝れねぇならちょっと待ってろ」



救急箱をそいつの傍に置き、

俺は元の位置に戻ってタバコに火をつけた。


手当をしてやらないのは、傷を見られるのを嫌がるから。

死ぬことを許されなかったそいつはと俺は、毎日この距離で過ごす。


しかし今日は、なんとしてでも寝かしてやりたい。

そう思った。


魘されることも、隈もなくして

安心して寝かしてやりたい。



こんなにも相手を思ったのは、人生で二度目で

でも、そんなことにすら気付かないふりをした。



俺とこいつは何もかもが違って

俺は人を愛し人に愛されるような人間じゃねぇ。



だから、俺は私情を隠して

ただのお巡りさんとして、こいつを生かしたい、それだけ。






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あい(プロフ) - はるさん» コメントありがとうございます、また返信遅れて申し訳ありません。ずっとスランプ状態で更新しておりませんが、必ずきちんと更新させて頂きたいと思っておりますので、もし待っていただけるのなら今後ともよろしくお願いします! (2022年5月7日 23時) (レス) id: ac72e0904e (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - あいさん!あいさんの作品いつも楽しみに読ませていただいています!真選組の女とこの作品はもう更新予定ありませんでしょうか?よかったら教えて欲しいです!!いつも楽しみにしています!! (2022年4月8日 23時) (レス) id: 7cd419164a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あい | 作成日時:2021年10月19日 21時

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