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大雪だった。

江戸じゃ見ないような異常気象。

足元には雪が積もり、大粒の白い塊が目の前で吹雪く。


だから休みます、そう言って休める仕事じゃあない。


部下や上司にこの吹雪の中見回りをさせるわけにも行かず

俺は尋常でない寒さの中江戸を歩いていた。


パトカーを出しても酷い目にあうだろうと踏み歩いたが、パトカーを出しても良かったかもしれない。


意味もなく傘を差し、特に何も無い、いや、本当に何も無い江戸を見て回る。


いつもこれくらい静かならこうも毎日忙しくしなくても済むはずなんだがな。

ため息は白い空気となって口から出ていく。


そろそろ帰るか、どこまで歩こうか、そう考え

目の前にある小さな公園まで行こうと足を進めた。


防寒はしているものの手足は既にかじかんでいる。


もう何も無いまま帰れることだけを祈り公園の入口に立った時

見えた丸い背中、小さな塊、薄着、寒そう。


こちらに背を向け丸まっているそれは確実に背中で

何も見なかった振りをして帰りたい本心に気付かないふりをして声をかけた。



「おい、んなとこで何してる」


「・・・」


「無視か。風邪ひくぞ、家は」


「・・・」


「なんか面白いもんでもあんのか?」



訳ありか、面倒だという気持ちを押し殺し

俺はそれの傍にしゃがんだ。


そうすると、ようやくそいつは動き

青白い顔と何も移さない瞳をこちらに向けた。



「・・・お巡りさん?」


「あぁ」


「その刀、刺したら死ぬ?」


「そりゃな」


「じゃあ私、人を殺したので、殺してくれませんか?」


「・・・はぁ。そういう話は屯所で聞く。

嘘なら怖い目合わねぇうちに家帰れ、送ってやるから」


「・・・死ぬのを、待ってるから」


「は?」


「寒さで、人って死ねるって」


「・・・お前、ここにどんだけいた?」



さぁ?と一言答えるそいつの異様さに、ようやくゾッとした。


殺してという言葉も、死ぬという言葉も

人の口から簡単に出てくるそれかと思ったが、そうじゃねぇ。


ほんとにワケありじゃねぇか。



「残念だがな、俺ァお巡りさんだ。

こんな日に死のうとしてるやつほっといたら職務放棄になっちまう」







2.→



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あい(プロフ) - はるさん» コメントありがとうございます、また返信遅れて申し訳ありません。ずっとスランプ状態で更新しておりませんが、必ずきちんと更新させて頂きたいと思っておりますので、もし待っていただけるのなら今後ともよろしくお願いします! (2022年5月7日 23時) (レス) id: ac72e0904e (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - あいさん!あいさんの作品いつも楽しみに読ませていただいています!真選組の女とこの作品はもう更新予定ありませんでしょうか?よかったら教えて欲しいです!!いつも楽しみにしています!! (2022年4月8日 23時) (レス) id: 7cd419164a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あい | 作成日時:2021年10月19日 21時

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