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ピッーーー
ホイッスルがなり、試合が始まる。
第一セットは相手チームのジャンプフローターサーブから始まった。
さすがは三重一位の学校で、サーブの威力は凄まじいものだ。
太一はレシーブ体勢になるものの、位置がズレたらしくボールはコートの外へと弾かれた。
サービスエースを決め、相手側が盛り上がる。
久方中の方は、キャプテンが惜しい惜しいと太一に声をかけていた。
「もう一本！」
そう叫んだ太一の目付きは変わっておらず、次のサーブはAパスで返していた。
それをセッターがトスを上げレフトのキャプテンが決める。
そんな感じで試合は続きほぼ互角の戦いを見せるも、22-25で久保中のセットという結果となった。
第二セットは相手のレフトとバックからのスパイクの調子が非常に良くなっていた。
――――第二セット
―――――久方中 19-25 久保中
久保中の勝利で試合は終わった。
試合が終わったあと、アリーナの外に集まり、キャプテンは目に涙を浮かべて、チームを見渡していた。
「オレはっ、このチームのキャプテンになってほんとうによかった。お前らだから、ここまで来れたしっ…ここまで悔しいって思える」
チームメイトは次々と泣き崩れる。
それを見守るお母さん方も涙目だ。
「オレら三年は、ここで引退だ。二年と一年。おまえらならもっと上目指して頑張れよ！」
「はい！！」
後輩も泣きながら元気に返事をした。
ふと車の中で見せた不安な表情の太一を思い出す。
あの時不安だったのは"相手が強いから"ではなく"このチームの最後の試合になるかもしれない"から……？
わたしは知らない"チーム"という存在に目が眩みそうになりながらも実感する。
彼らの夏は終わったんだ――――……。
チームは解散となり、太一はふらっとどこかへ消えていた。
お母さん方で話していて、混ざることもできず太一を探すことにした。
人目のつかないアリーナの外に、太一は俯せながら座り込んでいた。
息を呑む。
二年と少しの間一緒に過ごしてきてそんな姿は初めてみた。
わたしにはどうすることもできず、立ち止まっていた。
「……A、そっとしてやれ」
監督がわたしの肩を叩いてハッとした。
小さく呟いた監督の言葉は、なぜか蝉の鳴き声に掻き消されることなく心の奥に響いた。
―――――自分が繋げなかった分だけ悔しがって、涙を流した分だけ、人は強くなっていくんだから
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作者名：綴 | 作成日時：2023年10月28日 23時
