#Qualifying Day1 ページ7
―――平成22年8月9日
――――第32回 東海中学校総合体育大会 バレーボール大会 兼 第41回東海ブロック中学校バレーボール選手権大会
―――――三重県営サンアリーナ
そう。わたしは今、太一のお母さんの車に乗せてもらって三重県の会場に向かっている。
「ほんと、わたしまで連れて行ってもらうなんて…ありがとうございます」
「いいのよ、ほら応援は多い方がいいでしょう?」
「はい!全力で応援します!!」
「どーだかな。Aは矢作中に好きな選手がいるからな」
「好きじゃなくて憧れ!応援してるのは久方中だから」
石川くんは、好きというわけでも応援しているわけでもない。ただ憧れているだけなのだ。
太一のお母さんはクスッと笑っていた。
高速道路から抜けて、もうすぐ着くんだなぁと思ったあたりで太一のお母さんが、
「そういえばAちゃん、選手権予選のトーナメント表見た?」
と思い出したように聞いてきた。
「あ!まだ見てません」
「ほらこれ、」
太一が紙を渡してくれた。
「えぇ!?初戦の相手三重一位なの?」
久保中という三重一位の中学校だった。
「まあ大丈夫だろ」
太一は後部座席でふんぞり返った。
そうは言っても不安なのか若干顔色が悪い。
「太一……」
わたしは何か掛ける言葉も見つからず、車内は無音のまま三重県営サンアリーナに到着した。
太一はすぐにチームと合流した。
監督と目が合ったので、軽く会釈する。
「試合はすぐだから中入って席確保しなきゃ!」
「そうですね、早く入っちゃいましょう!」
と、お母さん方も同調して、急ぎ足でアリーナ内に入っていく。
たぶん最前列を確保したいという話だろう。
横断幕も抱えているのを見るとお母さんたちの応援したい気持ちが伝わってきてわたしも熱くなる。
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作者名:綴 | 作成日時:2023年10月28日 23時