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―――久方中学校卒業式
「こんな日までバレーしてるんだな」
体育館で制服のまま、ボールをぽんぽん打っているAに声をかけた。
「あ、太一」
えへへと笑う彼女の姿に呆れるも微笑ましく思う。
「太一とは来年からも一緒だね」
「クラスは別だろうけどな」
「アスリート特進だもんね」
「Aは特進コースだよな」
「そーだよ。あとね、バレーするのが楽しみ」
「……俺も」
俺たちだけで、コートも立っていない体育館は、静かな空間だ。
「ねぇ太一。わたし頑張ったと思う」
「どうしたんだよいきなり」
「県立は落ちちゃったけどね、バレーを始めて、楽しく過ごせて……たぶん上達してさ」
「レシーブ上手くなったよな」
「ブロックとかたくさんできるようになったし」
「ああ、トスも相変わらず上手いぜ」
「ジャンプサーブも打てるようになったし」
「まあでも、先生には何度も勉強しろって言われてたな」
「あはは…何度言われてもバレーしてたけどね」
「そういう根性でいた方がいいぜ」
「うん。それでね、その……」
何か気恥ずかしい言葉を言いたげな様子である。
「ここまで来れたのは、太一と監督のおかげだから感謝してるんだ」
「……それ監督にも言ってやれよ」
監督、泣くぞ。
「うん、だからさプレゼントボール、やりたいなって思ってさ」
「いいじゃん」
そう言ってAはボールとマッキーペンを俺に渡した。
キュッキュッ、と音を鳴らして書き連ねる。
「えへへ、なんか気恥ずかしいね」
このバレーボールは監督に渡しとき、監督はうっすら涙を浮かべていた。
2011年3月9日。
その日、俺たちの中学生活に幕を下ろした。
そして俺たちは未来へ向かって、次の一歩を踏み出した。
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作者名：綴 | 作成日時：2023年10月28日 23時
