#In The Future ページ22
Taichi said
「ハァ……ハァ…ハァ」
足を前に出して、走る。走る、走る。
(何してんだよ、A……)
今日は県立高校の合格発表日。
昨日風邪をひいたAは安静にしておくと言いつけたのに、合格か確かめに、高校へ行ってしまった。
高校の掲示板の前では、人がたくさんいて、喜びを露わにするもの、悲しみで落ち込む者などで溢れていた。
そんな中から俯いているAを見つける。
「Aっ!」
名前を呼ばれても気づかず、Aはただ立ったままだった。俺はAの側へ駆け寄る。
「A……?」
Aの顔を覗き込む。
目は合わず、俺の瞳には虚な目をした彼女の姿が映り込んだ。
ぁ、とAは意識を取り戻したように声を上げる。
「ねぇ太一……わたしの番号、なかったよ」
「っ!……とりあえず、帰ろう。風邪を引いてるんだから」
彼女は頷いたのか、マフラーに顔を埋めた。
Aは帰る道、何も話さなかった。
無気力のように、身体に力が入っておらず、俺に引っ張られる形で家へと帰った。
Aは寒さで震える手で鞄から鍵を出した。
ぶるぶると震えているので、俺が鍵を取って開ける。
家は電気が着いておらず、人っ気ひとつなかった。
Aの部屋は何度か入ったことがあるので場所はわかった。
「A、部屋入るぞ」と許可を得てドアノブに手をかける。
ベッドにAを下ろし、寝かせる。
(あったかいもの………何がいいんだろ)
とりあえず部屋に暖房つけよう、とリモコンを操作した。
(母さんに聞いてみるか)
一旦家に帰り、母さんにAが風邪を引いていることを伝えるとお粥を作ると言った。
「持っていくから、Aちゃんの側にいてあげて」
「わかった」
もう一度Aの家に入ると、Aがリビングで立って何かの封筒を開封していた。
「ちょ、A!寝ておけって」
言っただろ、と言おうとするもAの言葉が遮る。
「受かった……」
「え?」
「わたし、星城に受かったよ」
「よかったな、A」
「う、ん……くしゅん」
「……でも、喜ぶ前に身体を休めよう」
「よかったぁ」
Aは安心したように微笑んだ。
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作者名:綴 | 作成日時:2023年10月28日 23時