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徒歩圏内に食べ物やお土産が売られている商店街があるらしく、そこまで案内してくれた。
「一時間後にここに集合な。好きな店行って来い」
と言われたものの、見知らぬ地では迷子になるだろうからと川口と行動することにした。
「なんのお土産買いたい？」
川口に聞かれた。
「お菓子にしようかな。川口も？」
「うん、俺もお菓子がいいかなぁ？」
「なんで疑問系なんだよ」
「そいつ、たぶんケーキとか好きな人だから」
「ふーん…………好きな人に？」
「違う！幼馴染…ではないけど、なんだろ、まぁ家が隣で三年間ずっと仲良くしてきた奴」
「Aさんのことだよね？」
「そうだけど、知ってたりするの？」
「前、試合の後に少し話したんだ。それで」
「あーそうだったんだ。A、石川に憧れてバレーはじめたんだぜ」
「そっか。頑張ってるんだね」
「ああ、でもレシーブがめちゃくちゃ下手なの」
「へぇそうなんだ。Aさん、高校はどこへ行くの？」
「第一志望は女バレが強い県立なんだって」
「ふーん、受かるといいね」
「だな！てか早くお土産選んでたこ焼き食おうぜ」
「さっき食べたばっかじゃん」
「たこ焼きは別腹だろ！」
俺は家族へのお土産を買って、川口と割り勘でたこ焼きを食べた。
＿＿＿＿＿＿好きなの？
＿＿＿＿＿＿＿＿違う！
川口がAさんのことを好きではないと言ったあの時、ほっと胸を撫で下ろした自分に違和感を抱く。
別に川口がAさんを好きであろうと俺には関係ない。
もしかして、なんて考えるも首を振った。
俺はAさんのことを知らなさすぎる。
ただ自分に憧れてくれている人がいることが嬉しくて、憧れられる存在で居続けたいと思っているんだろう。
だから、この感情に深い意味なんてないし、今すぐに折り合いをつける必要もない。
どのみち俺はバレーへと気持ちが向いてしまうことは知っている。
もし、Aさんと同じ高校になって、同じ学校生活を送るようになったら――…………。
なんて架空の話は、思いついたところですぐやめた。
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作者名：綴 | 作成日時：2023年10月28日 23時
