#Thank you for just being you ページ16
Taich side
(何やってんだ俺……)
――――石川に憧れてバレーして、石川みたいに強くなりたいって思ってるの?
Aがそういう、ただの石川目当てでバレーやってるわけじゃないってのは分かってる。
ーーーー監督としては、才能を開花させてほしいと思うものだろう?
少し前に監督が言ってた言葉を思い出したんだ。
ただ、俺の方がバレーやってる歴は長いのに、Aに才能があるのが羨ましくて、それで嫉妬して。
どこかAが、変わっていった気がして…。
(なんか俺、ダセェ……)
はあ、とため息をついた。
なんとなく外に出たくて来た公園の大きなカエデの木が、うっすらと赤に染まっている。
「太一!」
横からそう叫ぶAの声が聞こえてくる。
「わたし、バレーが好きなの!」
「……うん、そっか」
「石川くんみたいに強くなりたいとか、今はそういうの分からないけど、ただバレーしてたいって思うかな」
(そうだよな、Aはそういう奴だよな)
ははっ、と声を上げて吹き出す。
「いーじゃん、Aらしい」
Aは何も変わってなどいない。俺がただ嫉妬していただけだ。
だが嫉妬なんて、俺らしくない。
常に前向いて生きてきたし、これからもそうだ。
強くなってやる。
たとえAのように身長がなくたって構わない。
俺だってバレーが好きで、バレーをやってるんだ。
それはきっとAも同じ。
Aはきっと、自分で進路は自分で決めるし、自分の道を自分で切り開いていく。
だからあえて言わないでおくよ。
監督の言葉も、俺が思ってることも。
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作者名:綴 | 作成日時:2023年10月28日 23時