#Watching Game ページ2
――平成22年7月30日
―――岡崎市中央総合公園体育館
愛知県中学校総合体育大会――――通称、中体連。
今日は同じ中学で隣の家に住んでいる太一――――川口太一の応援に来た。
太一は小さい頃からバレーをやっていて、バレーをするために愛知に引っ越してきたらしい。
ポジションはリベロだ。
内緒で見に来たのだが、道に迷って、公園に着いたのは予定より二時間も後だった。
(太一の試合終わったかなぁ……)
体育館の入り口にやっと着き中に入る。
太一やわたしも通う久方中は昨日で既にベスト4入りが確定しているため、準決勝があり勝ったら決勝へと進むのだ。
試合は行われているようで、アリーナ内の歓声が聞こえてくる。
階段で観戦席のある二階へ上がろうとした時、「あれ、A？」と声をかけられた。
「太一！」
「いつ来たの？」
「今！道に迷ってさ。あ、試合は？」
「あーうん、負けたわ」
「そっか」
「うん、3位決定戦も負けて、4位」
「でもすごいじゃん！4位おめでとう！」
と言ったら太一が頬を掻き照れたように笑った。
「おう、ありがと！まぁ選手権予選は全国いけるようにがんばる」
太一は全国大会に行きたいと前々から言っていた。
それに見合う努力を彼はしてたと思うし、それだけバレーのことが好きなんだと思う。
太一は憧れの選手がいて、そんな人みたいにバレーをしたいんだと言っていた。
もしかしたらその人が太一の心の燈を燃やしているのかもしれない。
そうやって何か一つのことに全力で取り組んで、憧れとなる存在がいる太一のことを、少し羨ましく思ってたりする。
「これから決勝見るけど、Aも見るの？」
「決勝？まぁせっかく来たし見ようかな」
試合を一つも見ずに帰るのは勿体無い。
「お、なら行こうぜ」
「決勝はどこの中学？」
「矢作と東海。たぶん勝つのは矢作中だろうな」
「そうなの？」
「めちゃ強いヤツがいる。準決勝で当たったんだ。ほんと強かったよ…」
太一がどこか遠くを見つめるように、呟いた。
試合は既に開始しておりアリーナは熱気に包まれていた。
席を探すことはせず、柵の近くで立って見る。
「何番の人？」
「え？」
「太一の言ってた、すごい人」
「キャプテンで背番号が1番のやつ。というか俺、チームのやつらのとこ行ってくるわ」
「あ、うん！またね」
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作者名：綴 | 作成日時：2023年10月28日 23時
