36-gr ページ36
･
珍しく夢を見た。
睡眠時間が短い体質で、夢なんて何年も見てなかった。
久しぶりに見た夢の記憶はまだ鮮明だ。
gr｢はぁ…｣
こんなの悪夢と同じだ。
見覚えのある庭で、見慣れた軍服を着たAがいた。
花を眺めている訳でも、ベンチに座ってくつろいで
いる訳でもなく、ただ立ち尽くしている愛しい妻の
後ろ姿に、俺は思わず声をかけた。
gr｢何してるんだこんなの所で｣
｢あ。いつからそこに？｣
gr｢ついさっきだ｣
軍服のロングコートを揺らして、Aが振り返る。
｢書類整理は片付いた？｣
gr｢いや、全く｣
｢そこは堂々としなくていいの｣
このやり取りは懐かしい。
俺が仕事を抜け出した時に限って、Aは
仕事の進捗を訊ねてくる。
今思えば、サボりを見透かしていたんだろうな。
gr｢んー。
それより、こんな所で何してたんだ？
息抜きにしては珍しいな｣
Aにとっての息抜きは睡眠をすることだと
知っている俺は、Aがここにいるのが不思議
で仕方なかった。
｢んー…、考え事、かな？
来世の私は何してんだろーって｣
来世を知らないA。
一方で、来世を生きている俺。
交わることない相違点にモヤモヤするが、
俺の口は勝手に動いた。
gr｢来世も俺の隣にいてくれないのか？｣
｢んふふ、だいすきじゃん。私の事｣
照れくさそうに笑う。
愛おしさが溢れて、気付けばAに抱きしめていた。
やっと触れることが出来た、待ちわびてた。
夢だと分かっていても、この時がいつまでも
続けばいいと思った。
だが、現実も夢も残酷で。
｢グルッペンごめんね。
私のことは忘れて幸せになって｣
gr｢なにを…｣
抱きしめていたはずの彼女は、姿を消し
Aの立っていた地面には、一輪の黒い
チューリップが置かれていた。
彼女が消えた。
こんなにも探して、こんなにも愛しているのに。
A、君はまた俺の目の前からいなくなるのか。
そんな幸せから、どん底に落とす後味の悪い
夢から目を覚ました。
gr｢A…｣
夢のせいでどっ、と疲れた気がする。
何も知らないAから、家を奪い、こっちの
世界の危険に晒し、そばにいさせようとする。
俺がやっている事はなんと傲慢なんだろうか。
自分がやっていることはどれだけ最低か分かって
いる。
それでも、姿を見たら思うのだ。
やっぱり俺にはAしかいないんだと。
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←35
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 989人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パピ(プロフ) - Rinさん» コメントありがとうございます！ チノくんの長年の思いと、他メンツの前世からの思いどちらが勝つのか今後ともお楽しみください！ この作品を見つけて下さり、ありがとうございます！ (2021年4月13日 21時) (
レス) id: cbf5dcb5ea (このIDを非表示/違反報告)
Rin - 待って待ってこれチノ君をとてつもなく応援したくなる...続きが楽しみです！ (2021年3月31日 3時) (レス) id: ee43a6ccd3 (このIDを非表示/違反報告)
パピ(プロフ) - マイメロだからわかんなーいさん» コメントありがとうございます！ ちょうど行き詰まっていた所なので、コメントをいただけてとても嬉しかったです。これからもこの作品をどうかよろしくお願いいたします！ (2021年3月24日 21時) (レス) id: cbf5dcb5ea (このIDを非表示/違反報告)
マイメロだからわかんなーい - え、、？すき、、(尊死)更新頑張って下さい！！ (2021年3月23日 23時) (レス) id: 5d77be8336 (このIDを非表示/違反報告)
陽キャのコミュ症 - パピさん» ヨイショ、ヨイショ、、、、あ、頂上ついた。()やったぁ(深夜テンションンンン) (2021年3月22日 22時) (レス) id: e8fc875ea4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パピ | 作成日時：2021年3月13日 17時
