乃木双葉は勇者であるｰｰ鷲尾須美の章･弐ｰｰ (ページ34)

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15話ページ34

過呼吸に陥った呼吸を何とか整え、立ち上がる

双葉『今度こそ逃がさないんだから…！』

そう言って進んだ先には、得体の知れない異様な光景が広がっていた

神樹様に似た神々しい樹木の周りを覆う紅炎(プロミネンス)が複数形成されている

しかも、倒した筈の王様擬きの核をバーテックス達が呑み込み増幅させていた

園子「何、これ…」

私も流石にこんな風になっていたとは予想していなかった為、驚きと恐怖で声が出なかった

ふと、胸の周りに手を当てる

私達姉妹はある事に気付いてしまった

否、気付かされた

双葉『嘘でしょ…？！』

園子「…心臓、動いてない」

この事が仲間の勇者(わっしー)に知れたらどう思うだろうか

双葉･園子『｢あぁ…私分かっちゃった…｣』

私達、乃木姉妹は気付いてしまったのである

＿この世界の成り立ちに

－－
－－－

双葉『あっ、わっしー！』

壁の外に出てから暫く捜索をしていると、制服姿のわっしーを見付け急いで側まで駆け寄った

園子「大変なんだよ！壁の外がね＿」

須美「誰、ですか…？」

何言って…

須美「何ですか、一体…」

何かを思い出したのか、辺りを見渡す

須美「…銀は、銀はどこ！」

敵意剥き出しで怒鳴るわっしーの表情は険しく、言葉を失った

何で…、銀の事は覚えていて私達の事は覚えていないの？

双葉『わっ、し…ぃ…？』

震える声を何とか絞り出し、いつものように呼ぶ

否定していても、何となく察しがついてしまう物だ

しかし、それを事実と認められない私の感情が答えに辿り着くのを邪魔する

飛鳥の影響で漫画やアニメの見過ぎなだけだと思っていた

今なら分かる

あの時、頭を横切った少年漫画の台詞はあながち間違ってはいなかった

"満開の後遺症"

満開を使った後、必ず何処かしらの身体機能が欠損する

それを仮に"満開の後遺症"、又の名を"散華"と呼称しよう

散りゆく華の結末は、枯れて朽ちてしまう事が世の習わし

それを私達に例えると、枯れて朽ちてしまう満開後の身体機能の欠損を指すのだろう

てっきり身体機能の一部が対象だと思っていたが、まさか記憶まで対象だったとは…

壁の外からは、私達に余裕を与えないかのように復元されたバーテックスの一斉攻撃が始まろうとしていた

こんな事なら気付かなければ良かったな…

血が滲むくらい強く唇を噛み締め、わっしーに向き直り安心させるように笑顔で言葉を紡ぐ

双葉『…大丈夫、後は私達が何とかする』