月が綺麗ですね。------【黒】 (ページ6)

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『そういうことは先に言っておいてくれないと』
［いや、私てっきり知ってるのかと思って］
『一緒に飲むのは何気今日はじめてなんだから知ってるわけないじゃなぁい！』

…え？
今日がはじめて？？

［え、今日がはじめてだったんですか？］
『え、うん。そうだけど』

だから何か？とでも言いたげな顔でこちらを見てくる田中さん。
一緒に飲むのは今日がはじめてだったのに、お互いあのテンションとノリ感で飲んでたのか…と思うと、いわゆる“陽キャ”のパワーに寒気がしてくる。
田中さんは知らないけど、リイナなんて普段と全く変わってないどころかむしろ楽しそうだったけど。

なんていうか、単純にすごいな。陽キャって。

『北斗？お前あと何食う？』
あ、そうだ。松村さん。
全然しゃべらないから目の前なのに忘れて…いや、忘れてはなかったけど。

「…ささみ。」
『まだ焼き鳥？』
なんて言いつつも、しっかりささみを注文している田中さん。

この数時間、ここにいて気が付いたことがある。
田中さんは、見た目はチャラそうだから実際の交友関係がどうなのかは分からないけど、悪い人ではなさそうだった。
長男なのかな、面倒見がよくて、聞き上手なこと。その上、話し上手でもあること。
そういう話にはとことん疎い私でも、“あぁ、これは女の子たちが夢中になるだろうな”って思う言葉や仕草がサラッと出てくること。

そして、

松村さんは全然しゃべらないっていうこと。