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Hokuto-6 ページ34

[えぇ、私?]

そう言った先輩は少し目を伏せて、ちょっとだけ躊躇ってから[松村くんだから言うけど...]と、話してくれた。


[私、結婚するの。今度の3月で会社も辞めるつもり。]


まだ籍は入れてないけど、既に婚約者がいること、結婚式はしないで婚約者さんの地元に家を買うから春にそちらに引っ越してしまうことを話してくれた。

突然すぎた。
本当に驚いた。

「...ぉおめでとうございます」
みたいな、間抜けな返事しかできなかった。

先輩は小さく笑って[ありがとう]と言った。

飲んでいたビールを置いた先輩はふと、[でも、ウェディングドレスは着てみたかったな]とこぼした。
周りの酔っ払ったサラリーマンにいとも簡単にかき消されてしまいそうな声量の、誰に向けられたわけでもない独り言のような言葉だった。
だけど、その一言にこそ先輩の本心が映し出されているようだった。

“俺なら着せてあげられるのに”

なんていう阿保みたいなことを考えてすぐに追い払った。

そして、俺の恋はその瞬間、叶わないことが確定してしまった。

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作者名:夕霧に向日葵 | 作成日時:2021年9月25日 15時

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