拾弐 ページ12
「万莉、今日はなるべく早く帰っておいで。雪が降るみたいだから」
「はぁい!!」
見送る母の声を背に村に降りる道を駆け出す。
確かに今日はよく冷える。
あんなに小さかった弟や妹ももう手がかからなくなったから、今年から村へ降りて働くようになった。
小さなお豆腐屋さん。
村に1つの豆腐屋だから、みんな買いに来る。
「万莉!!明日も来るのかい?」
「明日もいますよ〜!!」
「そりゃあ明日も来なくちゃな!!」
「また来てくださいねー!」
「さっすが、看板娘、やり手だねぇ」
「またまたぁ!コマさんってばお上手!!」
そう言って店先で楽しくお客さんの御相手。
みんな沢山お話してくれるから、すごく楽しい!!
「...また来てるよ、ほら」
「ほんと、毎日毎日ご苦労なこと」
「万莉ちゃん気をつけなさいよ、ああいう根暗なやつが1番怖いんだから」
「そうよ、嫁に行っていたらそこまで心配することもないんだけど。あんたはまだ娘なんだから」
「お母さん!!」
毎日見える人影に口々に言うお客さんの中に混じって母が言う。
「この間だって、あそこのお坊ちゃんに縁談持ちかけられたんでしょ?」
「そうなのよ。それなのにこの子ってば考えることなくお断りします。って。はぁ、いつ孫の顔が見れるのかしら」
自分の話をしているけれども、そんなことを気にせず今しがた噂になっていた彼の去っていく後ろ姿を見つめた。
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作者名:かんな | 作成日時:2019年12月31日 18時