かくしごと

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『そうかも。仮面つけてるから今も表情が出ないのかも。でも先生、私仮面の外し方がわからない』

「うーん、僕もわからんけどそのままやったら一生自分の顔じゃない顔になっちゃうで？」

『難しい…よくわかんない。私の顔は私の顔だもん』

「嘘って真実とは違うやろ？それと同じ」

『私の顔は仮面が嘘で、真実が私の本当の表情ってこと？』

「そう!」

よく分からないというような素振りを見せて頭を振った。
お風呂に入ったばかりの彼女の髪からは水が飛ぶ

「冷たっ！」

『あ、ごめんなさい…』

「もーあかんて！ちゃんと拭かないと風邪ひくやん！」

わしゃわしゃとバスタオルで頭を拭く
この子の親はAちゃんの本当の表情を見たくなかったんだろうか。
心から笑った、心から泣いた、そんな表情を。
僕は見たい。

「どうしたら早く治ると思う？」

『私の顔？』

「そう。もうそろそろ治ってもええ頃やと思うんだけど。傷は痛む？」

『ううん。全然痛くない』

「1回、笑ってみて？」

こく、と頷くとギギギギギと滑りの悪い音が聞こえそうな感じで口角が上がり目じりが下がる

「…え、動くやん」

『うん、動いた』

でもやっぱ無理やり笑ってる。

「次の目標！」

『？』

「これは僕だけほ目標やけど、Aちゃんを心から泣いたり笑ったりできるように頑張る」

『いえっさー』

「もっかい笑って」

もう一度機械的な笑みを作って見せてくれる

「面白いと思ったことないん？」

『面白くて笑ってもこうなる』

まじか。

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