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皆「ありがとうございました！」
やっと終わった番組の収録。
イスから立ち上がると、ぐーっと伸びをする。
その後に、共演者さんたちへの挨拶。
この仕事をしていると、マナーというものは
嫌でも身につくもので、
業界で成功している人は皆こういうことも
とことん徹底している。
「ありがとうございました！またお願いします。」
ぺこぺこ頭を下げるなんて、かっこ悪い。
そう感じたことは何回もあったけど、さすがに
もう思春期の男子みたいな思考は卒業した。
大体の共演者にお礼をして、楽屋に戻ろうと
した矢先。
紫「あの〜、すみません。鈴木さん、！」
後ろから、ハスキーな掠れた声。
ちらりと首だけで振り返ると、先程私を穴が
開くくらい見つめてきたあの、彼。
「あ、平野さん。今日はありがとうございました！
また、お願いします！」
そういってぺこりと頭を下げる。
笑顔で顔をあげると、キョトンとした表情をした彼。
紫「、、あっあ！ありがとうございました！
あの、それとなんですけど」
これ、、と彼が紙袋から取り出したものは
彼のグループのアルバム。
紫「よかったら、これ！全員に配ってるんです！」
キラッキラの笑顔をこちらに向ける彼は
やっぱりどこから見てもかっこいい。
さすが、アイドルだな〜。なんて。
「いいんですか？ありがとうございます！」
いえいえ！と謙虚な彼から差し出されたそれを、
そっと受け取る。
一瞬、触れ合った指が熱かった。
「家帰ったら、聞きます！」
紫「ぜひ！聞いてください！！､､､あっ、と……」
一瞬で表情が変わったから、私が何かしたのかと
不安になった。
………え、？気持ち悪いとかじゃないよね？
私、なんか言われる！？共演もうNGとか……？
そんなネガティブな思考が頭をぐるぐる
回ってしまうのも、この業界あるある。
紫「……よかったら、なんですけど、……連絡先。
交換しませんか？」
想像もしなかった彼の言葉に少しだけ驚く。
固まった私に焦ったのか、
紫「いやいや！嫌だったら全然大丈夫です！！
すみません！」
と、急にあたふたしだす彼。
その姿に思わず笑みが溢れた。
「いいですよ、しましょ！」
そう言ってスマホを差し出す。
紫「………よ、よかったぁ〜…断られるかと
思ったぁ〜……」
そう言って私の画面に映し出されたQRコードを
読み取る彼は、まるで小学生のような笑顔だった。
…………すごく、魅力的だった。
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作者名：憂流。 | 作成日時：2024年1月3日 13時
