よんじゅうはち ページ2
「はい。コップ勝手にとっちゃってごめん」
「だいじょぶ、ありがとう」
そらるさんが手渡してくれたコップにそっと口づけて、冷たいお茶を流し込む。
お茶の冷たさで少しだけ冷静になれた。はず。
「そらるさん、なんで家分かったの」
既に何回も聞いたその問いをまた投げかけるも、
「さぁね」
とごまかされる。
彼のことだ。何かしら伝手があったんだろう。
余計な詮索はしないことにする。
2人とも何も言わない時間が過ぎていく。
1人ですごす時間も嫌いじゃなかったけど、やっぱり皆といる時間の方が好きだなぁ。
お茶を飲み終えてコップを机にことん、とおいたとき、そらるさんが口を開く。
「なんで、どうしてって深くは聞かないけどさ、」
「うん。」
「悲しくて、寂しかった。それだけは知っておいてほしい。」
「急に消えたのはごめん、本当に。」
「いいよ、Aにも考えがあったんでしょ?」
その言葉に僕は首肯した。
悲しい、寂しいって思ってくれてたんだな。僕とおんなじ気持ちを抱いてくれたんだ。
なんだか胸のあたりがぽかぽかと暖かくなった。
それからしばらく僕らはなんでもないような話をした。
生産性なんて皆無。
離れてた2年間の時間を取り戻すかのように話し続けた。
ただひたすらに楽しくて、その時間が心地よかった。
唐突にドアチャイムが鳴り響く。
「嫌な予感がするよそらるさん」
連打されすぎじゃない?うちのドアチャイム。
「ふふっ、行ってきなよ。来客だよ。」
よっこいしょ、とおじさんみたいに声を出して立ち上がる。
なんとなく、モニターの先にいる存在は察している。
「はーい」
「A!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
真冬だよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
うるさい。
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ただの阿部担(プロフ) - 今見つけて、一気読みしました!上手く伝えられないんですけど、すごく好きです!その場でジャンプしちゃったくらい好きです。これからも更新頑張ってください! (2021年7月24日 10時) (レス) id: 341728400e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梓 | 作成日時:2021年7月8日 15時