【WT】スパイは紫に笑ってほしい【sm】

18話 ページ18

一気に談話室内の警戒感が高まる。


『……絶対に、あの国王は皆様を裏切ります。出過ぎたことを言いますが…もっと警戒した方が、良いのではないでしょうか。今頃もう何か手を打ってきているかもしれません。ワイテル国を内から揺さぶるために』


実際それで送り込まれたのが私だ。


「…今まで、α国と俺らは関わりがなかった…ただ、そんなに嫌な国王だという奴のもとで仕えていたということは、お前も危険人物なのか？」


『…あー…そうなっちゃいます…？』


シャークん様の思わぬ反応に、困ってそう返す。

まさか私自身が危険ではと疑われるとは、誤算だった。"元"スパイと嘘をついて、印象を良くしようとしたのに。


「急に元スパイとかきいて、すぐにお前を信用できるか」


シャークん様が一気に距離を詰めてナイフを振りかざす。


自分のナイフで受け止める。

キィン…！とナイフのぶつかり合う音が響いた。


「……‼︎…Aっ、！」


スマイル様の焦った声。


『大丈夫ですよスマイル様。私、そこそこ強いので』

「……ッッ」


スマイル様が泣きそうな目でこちらを見ている。

いまだにシャークん様は攻撃を仕掛けてくる。


『…ごめんなさい、怖がらせて』

スマイル様に向けて、謝る。

シャークん様のナイフを避けながら、スマイル様に近づく。


『……私は、スマイル様の味方です』


不安に揺らぐスマイル様の瞳と視線を合わせ手を取ると、スマイル様はようやくほっと息を吐いた。


…が、その瞳がまた大きく揺れた。


「しゃけ、だめ！」


なかむ様の声。

同時に目の前のスマイル様が覆いかぶさってくる。


「……っ…う…」

『…⁉︎』

「スマイル⁉︎」


きんとき様の大声。



完全に、油断していた。シャークん様は、スマイル様がこんなに私のそばにいるのに攻撃を続けないと思っていた。

スマイル様はシャークん様のナイフから私を守って、肩口を怪我している。

カランとナイフが落ちる音。シャークん様が自分のしてしまったことに驚いて落としたのだ。


『………スマイル、様…！』

スマイル様の怪我が痛まない程度に押しのけようとするけれど、スマイル様は意地でも動かないと決めているように、私を抑え込んだ。


『退いてください、傷、手当しないと！』


「…ッ、やだ…」

『どうして⁉︎』


「やだ！俺が、退いたら…Aが、シャケに殺されちゃう…‼︎」



悲痛な叫びに、幹部の皆様が息を呑む音がした。





　

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