【刀剣乱舞】裏歴史調査本丸 壱【薄桜鬼】

２３．見知らぬ男 ページ48

〜蜻蛉切side〜

和泉守殿と大和守殿は非番故、
本丸へと帰還した。

あの真冬に起きた事件から、
この新選組の裏とやらには遭遇せず、
今日もいつも通りの日常だ。




原田「伊木、行くぞ」

蜻蛉「今行きます」




春が近づいて来ている３月。
今日も幹部隊士たちに目立った動きはない。

２振りを帰還させて良かった。
用事が無くとも、たまには帰りたい時もあるだろう。

この半年で着慣れた浅葱色の羽織。
人間関係とやらも、多少だが確率し始めている。

これは２振りのおかげでもあるが、
原田殿のおかげでもある。

ただ慣れない事が一つ。
呼び方だ。




蜻蛉「原田殿」

原田「原田でいいよ。
"殿"って、何だかむず痒いんだよな」

蜻蛉「原田、さん。明日は非番故、
自分は少々出掛けますが、よろしいでしょうか？」

原田「ああ、いいぜ。
非番なんだ、好きにすりゃいいと思うんだが…。
おまえは真面目だな。
みんな非番の時の許可なんか取らないぞ？」

蜻蛉「何か用事があった時、
探して頂くのは申し訳ないので」




自分も特に報告する事はない。
この任務に関しての文句もない。

だがやはり、慣れない土地に
ずっといるというのは疲れるのだ。

いつも通りの巡察経路を歩いていると、
何処からか視線を感じて目線だけを動かす。




蜻蛉「あっ……(るじ？！)」

原田「何だ？」

蜻蛉「い、いえ、何も…」




狭い路地の中に見つけたのは、
本丸にいるはずの主と加州殿。
そして、非番で戻ったはずの２振り。

それに、見知らぬ男だ…。

主たちと一緒にいる事と、雰囲気を見れば
刀剣男士だと分かる。
新しく顕現された刀だろうか？

主は俺が見つけた事に気付き、
いつもの優しい笑顔で応えてくれる。

だが、見知らぬ刀剣男士は
鋭い視線をこちらに向けていて、
それに気づいた主が
必死に腕を引っ張って
その場を立ち去ろうとしていた。

久しぶり、という程ではないのだが、
主の姿をこの時代で見れるというのは、
言い難い安心感があるものだな。




原田「どうした？何かあったのか？」

蜻蛉「いえ、何もありませんが？」

原田「顔が緩んでるぞ。無意識か？
おまえがそんな顔するなんて珍しいな」




悟られるほどに緩んでしまっていたとは…。

もう一度気を引き締め直し、
巡察へと集中する。

主がこの時代に直々に来るということは、
何かあったんだろうと分かる。

２振りが帰って来たら聞く事にしよう。

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