21.情報不足は1番困ります。 ページ22
私たちは無言のまま、見慣れたはずの道を歩いていく。人は誰もいないし、鳥も飛んでいない。いや、私たち以外の生き物は『こっち』ではまだゴーレムしか見ていない。まるで、一瞬で世界が滅びてしまったところに取り残されたような……そんな雰囲気だった。
時間がたっても空が赤黒いのは変わらない。今は何時だろう、と思って腕時計を見ようとしたけれど、腕時計は持ち込めなかったみたいだ。けれどもここまでちゃんと街なんだ、学校の時計はきっと機能している……そう信じることにした。
前回は息付く暇もなく戦ったけれど、今回は本当に何もいない。理紗がクラスメイトと先生を心配する気持ちと理由がだんだん分かってきた。ここまで人がいないと、自分たちも不安になるし、あの二人も同じように消えてしまったのかと思うと……
「……あっ」
車もいないな、と思いながら道を眺めていると、先頭を歩く健が突然声をあげた。誰かいるのだろうか。健が指さすあたりを、よく見てみる。
そこでは、ゴーレムが2体、学校の前をうろうろしていた。
「見張り役、といったところかな」
なるほど、確かに。見張り役と思われるゴーレムは、前回最初に現れた小さいやつと似たような大きさだった。大きいやつは幹部とか親玉とか、そういうポジションなのかもしれない。
「まだ気づいてない?」
少し屈んで、学校を囲う植木に身を隠す。そこから体の半分だけ乗り出して、正門前の2体を観察してみた。
恐らく向こうは気づいていない。そして、この2体を倒さないと校内には入れない。裏門はここのちょうど向かい側、遠すぎて行ったことがない。あっち側の電車を使う人がいてくれたら、案内してもらうのに。
「遠距離から不意打ち……してみるよ」
しばらく見ていると、蒼太が後ろでそう言うのが聞こえた。私と健は壁に完全に隠れる。相手は見えなくなったけれど、その代わりに蒼太が相手に近づく。その後ろには理紗。
「Attacco-Blu-Second」
「Calore-Giallo-Primo」
理紗の、多分攻撃アップ、に重ねて蒼太が魔法を使う。蒼太の持つ矢が赤く光った。昨日も使っていた、熱を持たせる魔法ってやつだろう。
「……これで!」
蒼太が矢を放つので、私も後ろから見学する。なるほど、彼の矢はまっすぐにゴーレムに向かい、1体に大ダメージを与えたようだ。
ゴーレムがこっちに気づく。戦いはこれからだ。
22.慣れてきたことにしていいんですか。→←20.まだまだ色々わかりません。
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シュウ - 待っ…面白いです! (2021年9月3日 0時) (レス) id: f920010a89 (このIDを非表示/違反報告)
恋 - 読んでいて楽しいです!こんなおもしろい作品をつくってくれてありがとうございますっ!これからも応援してます! (2021年5月8日 20時) (レス) id: b0074abe1a (このIDを非表示/違反報告)
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