74 血に飢えた獣 ページ38
*
血の十字架に磔になった灰色の少女。
その前に立ったテオは、恍惚とした表情でセレネを見ていた。
実況「な……なんと、血の少女が十字架に姿を変えて、セレネ選手を捕まえてしまいました……。絶体絶命のピンチ、セレネ選手、動くことができません!」
十字架に触れた肌は焼け、ボタボタと血が垂れていた。能力も解除されてしまったセレネはうなだれたまま、身動きもしない。
テオ「お前はいつでもそうだったな。オレが何をしても、屈さなかった。お前が求めるのは、血だけだった」
セレネ「……」
テオ「でも今度こそ、オレのモノになる……!」
テオのモノになるーーそれはすなわち、
セレネの、死。
ゴン(このままじゃ……!)
キルア(セレネは死んじまうぞ!)
テオはセレネの腹を殴り、セレネは血を吐き出した。その血を手に受けながら、テオがセレネの首に手を伸ばす。
テオ「終わりだ」
その右手がセレネに触れた時ーーテオにセレネの瞳が見えた。
ゾクッ、と恐怖が身を貫いた。
セレネは、笑っていた。
瞳にテオをーー否、
赤い血を映して。
その瞬間、セレネから漆黒のオーラが噴き上がった。
漆黒のオーラは血の十字架を容易く粉々に破壊する。
テオ(なんだ……!?これは……)
反射的に後ろに跳びずさったテオだったが、右腕に異変を感じた。
テオ「……っな、あ!?」
肘から先が消えていた。
セレネ「切っ、ちゃった」
セレネの周りには、オーラが形を変えて、漆黒の刃が嵐のように荒れていた。
セレネ「……やっぱり、満たされなんかしない」
一歩、テオに近づく。
セレネ「血に飢えて、尚」
また、一歩。
セレネ「ねェ、私は何を求めているのかな?」
独り言のように呟き、セレネは持っていたテオの右腕を潰した。
セレネ「『変幻自在の才能/カメレオンルミィ』」
その血が、あの血の少女へと姿を変える。
テオ「そ、れは……」
何故、オレの能力が……。
と、呟くテオに、セレネはニッコリと笑いかけた。
セレネ「私は相手の能力を、自分にトレースする。これが私の能力ーー『変幻自在の才能/カメレオンルミィ』」
類い稀ない応用力。発想力。学習能力。
セレネの才能を最大限に活かした能力だ。
テオ(ああ、なんて、美しいんだろう)
セレネに似た少女が、自分の首を千切らんと手を伸ばす。
テオの瞳に映るのはーー
テオが求めていたのはーー
愛する相手に、命を絶たれること。
セレネ「さよなら」
ブチンか、グチャリか。
そんな音と共に、テオの首はあっけなく胴体から離れた。
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勿忘草 - 全部面白いですが、個人的に54話が好きですw壁と恋人w嫌だwwx (2020年6月4日 21時) (レス) id: a69079c5f6 (このIDを非表示/違反報告)
藤原 黎明 - ゆーじさん» わぁぁぁぁあ!?もう見てくださったんですか!?なんか、もう、嬉しくて今、ベッドで転げまくりました……← 頑張ります!!本当、応援ありがとうございます!! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ae872f1ade (このIDを非表示/違反報告)
ゆーじ - 君臨とは違った夢主ちゃん可愛いっス…。クロロ目隠しするのに「ヒソカが…」…言っちゃったら意味なくね!!?ってツッコンで笑ったり、面白くてヤバいです!!3も引き続き更新楽しみにしてますー!! (2018年7月30日 23時) (レス) id: 48b034f42e (このIDを非表示/違反報告)
黎明 - 55を間違って非公開にしてました!すみません! (2018年4月13日 12時) (レス) id: b38fe6bf77 (このIDを非表示/違反報告)
黎明 - さくらんぼさん、ありがとうございます!53は、無い文章力を振り絞って書いたので、そんな風に言ってもらえて嬉しいです。更新頑張ります! (2018年4月8日 22時) (レス) id: b38fe6bf77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤原 黎明 | 作成日時:2018年3月6日 23時