【H×H】美少女はクロロの弟子！せぶんす！

176 「シリアスで間がもたない」クラピカ「そうだな」「クラピカの一発芸とか……無いね」クラピカ「……」 ページ31

自室に入ると、私のベッドにセレネがいた。毛布が小さく上下している。どうやら寝ているらしい。
枕に半分顔を埋めているので、額から濡れたタオルがずり落ちている。それを取って脇の机に置いてから、ベッドに腰掛けた。

(ずいぶんと無防備だな)

寝息も聞こえるくらい近くにいるのに、セレネは起きるどころか、身動きもしない。相当消耗しているのか。

(奴の側では、いつもこうなんだろうな)

親の側で安心しきった幼子の如く、奴の側で彼女はきっとこうして眠り、話し、笑う。

「セレネ」

名前を呼んでみたが、小さく身動きしただけで目は覚まさない。

(……今なら……)

思わず右手の鎖を見る。正確には、その小指を。

「クラピカ……？」

小さな声が聞こえた。

「セレネ」

「今、攻撃しようとしたでしょ……ふあ」

……前言撤回。こんな人種に無防備なんて言葉は形容し難い。

「解読できたの？」

起き上がろうとするセレネの額を押さえ込む。まだ熱い。

「……できた」

「ん、そか」

質問してくるものだと思ったが、セレネはそう言っただけであらぬ方向に目をそらす。中身は予想できているのか、それとも聞きたくないのか。

「……シビュラ、とはセレネのことか？」

迷ったが、尋ねる。
セレネは頰を枕につけたまま頷いた。

「……母親がクルタ族か」

これにも頷く。しばらく沈黙してから、息を吸う音が聞こえた。

「……あのね、師匠はね。その頃から私を知ってたみたいなの。……だから、その……」

「確かに、『クロロ』という名前が何度か出てきた」

「うん……そっか」

また口を噤んだ。目が揺れている。泣きそうなのかと思ったが、これは迷っているように見えた。

「……クラピカ」

「何だ？」

ぐいっと手を引っ張ってくる。意外に思えて、セレネの顔を見ると、瞳が緋く、緋く染まっていた。



「『シビュラ』を殺して」




……何を言っているんだ？

「シビュラに執着する限り、あの人が私を見てくれることは絶対に無い。あの人はきっと、私がシビュラだったから私を助けた。一緒にいてくれる。でも私はセレネなの。流星街の暗殺者で盗賊のセレネなの」

早口で呟いて、セレネは私の手を頰に触れさせた。

「彼はシビュラを抱きしめた」

引かれた私の指先が、セレネの唇に触れる。

「彼はシビュラにキスをした」

許せないの、と掠れた声でセレネは言った。

「本当の私は、シビュラ(少女)なんかじゃないのに」

許せない、と呟きながら、セレネは酷く悲しげな顔をした。

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