172 「あぁあもう無理。師匠に会いたい。師匠に」 ページ26
【セレネside】
「ゔ……」
吐きそうになったが、胃の中には何もない。喉の奥が酸っぱい感じがした。
「あーー……くそ」
あの時のことを鮮明に思い出した如きで、がたがた震えている自分に嫌気が差して、髪を乱暴にかきあげる。
「……師匠が、側にいたとか、信じられないい」
母親の死ぬところは、もう何度も夢に出てくるから覚えている。しかしその前後は覚えていない。少なくとも、私が母親以外の人と話したような記憶は無い。
「でも、クロロはそう言ってた」
「それ嘘なんじゃない……？」
「くだらねぇ嘘はつかない」
「だよね！」
ひょいっと整いすぎている顔が私の目の前に来る。うお、びびった。
「すごいな、瞳」
「……今、緋の眼？」
「ん。俺は初めて見た」
綺麗、と屈託も悪気も無い声色で呟く。
私は、こんなのいらなかった。クルタ族なんていなければ、こんなに辛い人生なんて無かった。虚無の中に燻る憎悪をどこに向けて良いのかもわからない。
「お母さんも、同じだったのかな……」
知りたい。お母さんも、師匠も。
お母さんはどうして、何を思って生きていたのか、師匠は何で私と出会えたのか。
私の虚無は、そうすれば消えるかもしれない。
「師匠って、まだしばらくは帰ってこないよね」
「……多分」
「チャンス、OK」
それなら、やはり行かなければならない。彼の所へ。
「旅団のみんなにはバレないようにしないとな……」
「何を？」
「彼らの宿敵に会いに行くから！」
あいつしか、クルタ族のことはもう知らないから。会いたくないけど！！
「おはようございます皆さん！！」
「お、はよう……」
次の日の朝、ばっちりスーツを着て大声で広間に行くと、そこにいる全員に何故か引かれた。……え、何で？
「あ、えと、仕事に行きます」
「OLかな？」
「Office ladyは私には似合わなくってよ」
盗みの時に潜入のためにコスプレしたことあるけど、目立ちすぎて速攻バレました。
「何処に行くんだい？」
「新体制になった十老頭の所。営業してくるの」
「OLじゃなくて営業か」
「自営業者ですから」
流星街という名の組合に属してる自営業者(盗賊兼暗殺者)だな。
「じゃあ行ってきます！」
「早く帰ってきな」
「う……ん！わかんない！」
何か言われる前にびゅんっと消える。私、嘘つくの下手なので！逃げよう！！
「さー、行くぞー！」
シャル(目、緋かったな……)
173 「季節外れ！？んなこたぁ知らねぇな！！」→←171 「何度も何度も夢に見ては後悔と悲しさと怒りと憎悪で心がいっぱいになるんだ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 257人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レン(プロフ) - このシリーズ3周するくらいとんでもなく面白かったです!!!!!更新停止なのは悲しいけどいつまでも待ってます！ほんとにこの作品大好きです!!!!! (1月28日 21時) (
レス) @page34 id: d242f3e9c7 (このIDを非表示/違反報告)
アロン(プロフ) - ついにキメラアント編っ！更新停止になっちゃってるけど、また更新再開してくれると嬉しいです！ (2021年8月26日 13時) (レス) id: ed0e3e5242 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - このシリーズめっちゃくちゃ好きです！更新待ってます！！ (2021年2月1日 8時) (レス) id: f151b0ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
Kan - 更新楽しみにしてます(^_^)ﾉ (2020年9月19日 23時) (レス) id: 807bcc086e (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草 - フレンチトースト頬張るふぇいたん可愛すぎる！！！ (2020年6月5日 21時) (レス) id: a69079c5f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藤原 黎明 | 作成日時：2019年8月7日 21時
