223 非日常 ー邂逅ー ページ18
*
眠る少女の頰に、そっと男が手を触れた。
滑らかとは言い難い感触が指先に感じられる。
荒れた肌を真っ直ぐに裂いた切り傷を撫で、オーラを送る。
少女が目を覚ます気配は無い。規則的な呼吸は、少女を拾ったその夜よりもはるかに楽そうだった。
ほとんど白い髪の毛は背まで長い。元の色は黒だろうかーー恐らくはショックやストレスによる脱色。毛先はかなり傷んでいて、少女の生活が窺い知れた。
セレネと名乗った少女は、まるで捨て猫のようだった。
それも、何度も何度も人間に傷つけられ、捨てられ、自分以外のものを信じられず、異常に恐怖するような。
身体には生きているのが不思議な程の傷がいくつもあった。
傷の上に傷を重ね、痛くても何かに突き動かされるかの如く人を殺し続けた、その結果。
男がセレネから手を離すと、びくりとセレネが痙攣した。
「……いや」
小さな声が口から漏れた。
「いや!おねがい……もうやだ!」
喉を掻き毟るのを止めようと、男は手を掴んだ。閉じた瞼に水がにじむ。
「もう……殺して」
すうっと、涙が頰を流れた。
「目を覚ましたか」
男に声をかけられたセレネは、敵意と警戒を露わに男を睨みつける。
「だれ」
「クロロ=ルシルフル」
「……知らない」
男はセレネをじっと見て、僅かな失望を込めて呟いた。
「だろうな」
ーーこれが、2度目の邂逅であろうとは
しかし少女は変わってしまっていた。
汚れていても白くて柔らかかった身体は傷だらけになり、
あどけない瞳は酷く絶望に満ち、
小さな手が握るのは、血にまみれたナイフだった。
(約束……守れなかった)
そして、そう変えてしまったのはーー彼の知る幼い少女を消したのはーー紛れもなく、彼自身なのだ。
ーーあの子を……おねがい
貴女が死んだ時、あの子を守るのはオレだった。
それなのにオレは、あの子から手を離した。
オレのせいで、あの子は消えたんだ。
「何の義理も無いのに、何で私を助けたの?」
覚えてないなら、それでいい。
代わりに、お前をオレに縛り付けてしまおう。
もう、オレから離れられないように。
お前が消えてしまわないように。
「特に理由は無い。ただ、面白そうだと思ったから拾った。……それだけだ」
(縛ってしまえ)
この邂逅を無駄にはしない。
(縛ってしまえ)
今度はお前の一生を奪う。
(縛ってしまえ)
そのためなら何だってする。
(縛ってしまえ)
オレの前から消えてしまわないように。
*
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勿忘草 - 216話の少女(57歳)に吹きましたwロリババa((殴 (2020年6月5日 21時) (レス) id: a69079c5f6 (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草 - 212話最高ですね夢主...強い(確信) (2020年6月5日 20時) (レス) id: a69079c5f6 (このIDを非表示/違反報告)
藤原 黎明 - 白瀬さん» 早口言葉ですね!!さぁご一緒に!!「ボポボボポボボポばがぶっ」(舌を噛む) (2019年8月29日 17時) (レス) id: d9b557ad09 (このIDを非表示/違反報告)
白瀬 - ボポボって言いづらいよね‥(遠い目 (2019年8月19日 21時) (レス) id: 07b463bee0 (このIDを非表示/違反報告)
藤原 黎明 - 林 香織さん» 香織さん、ありがとうございます!クロロイケメンになってますか!?良かったです!!更新ペースが遅くて申し訳ないです…楽しんでもらえるようにこれからも頑張ります! (2019年7月12日 23時) (レス) id: d9b557ad09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤原 黎明 | 作成日時:2019年4月7日 0時