175 堰 ページ12
*
「わ、私、師匠に、もう、会えないか、な?」
きりきりと胸が痛む。喉がおかしくなって、掠れた情けない声しか出ない。
「私は、緋の眼だし、ずっと隠し、てて。昨日も、結局、何にも、できないし」
声が震えた。目の淵がじわあっと熱くなる。
「師匠は、もう、私なんか……っ、いらない……!!」
やっと、やっと、自分を晒け出せるような、そんな人だったのに。
私を助けてくれて、育ててくれて、優しいものをたくさんくれた人なのに。
ずっと、求めていたものをくれたのに。
「もう……ッ」
その先は言えなかった。泣き声に全部かき消されて、ぼろぼろ涙は溢れるし、止められなかった。
子供のように泣き出した私の身体を、そっと温かいものが包む。
シャルナークさんの胸にしがみついて、堰が切れたように泣き続けた。
こんな風に泣いたことなんて、1度も無かった。
「っう、うええええ」
たくさん、たくさん思い出して、悲しくなって、泣いた。
私は、師匠に会いたいのに。
一緒にいたいのに。
私は、こんなに師匠がーー
シャル「セレネ」
「……?」
顔を上げると、シャルナークさんが真面目な顔をしていた。
シャル「セレネはクロロに会いたいんだよね?」
頷く。
シャル「じゃあ行かなきゃ」
「行くって、何処に」
シャル「クロロのところ」
「だって、師匠は」
シャル「クロロは、セレネのこと信頼してる」
何言ってんだ、この人。そんなこと、無い。
シャル「自分でそう言った。『甘いところはまだまだあるが、あいつのことは信頼できる』って」
「あの人……バカ、なの?」
シャル「そうかもね。でも、セレネのことはオレたちも信じられる。セレネの記憶を、共有したし」
私の、記憶。それはつまりーー
シャル「全部。パクノダの記憶と一緒に流れ込んできた。……でも今は、そんなのどうだっていい。オレたちはセレネに仲間を助けてもらった。それは感謝してる」
「……だからって、私は結局、何も止められてない。師匠の胸には刃、ウボォーにも、パクノダさんにも、危険は付きまとったままだ」
シャル「あれ?君ってそんな事言う人なの?」
シャルナークさんが私の頰を撫でる。火照った肌に、ひんやりとした手が心地よかった。
シャル「オレたちが、クロロが知ってるセレネは、元気いっぱいで子供みたいに無邪気だよ」
「……」
シャル「元気出しなよ。それで、クロロにちゃんと言ってごらん」
「……怖いよ」
シャル「大丈夫。君は、強いから」
*
176 「……あ!?やっと戻って来たよ私が!!私が来た!!」→←174 咳
234人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
勿忘草 - とっても面白いです!ところでクラピーは女装してなくても可愛い気がするのは私だけでしょうか? (2020年6月5日 16時) (レス) id: a69079c5f6 (このIDを非表示/違反報告)
藤原 黎明 - 皆さん、温かいコメントをありがとうございます!本当支えになります。ここからも楽しんでください!よろしくお願いします! (2019年4月1日 0時) (レス) id: 862efe2a89 (このIDを非表示/違反報告)
夜空?(プロフ) - ゆっくりでもいいです。いつでも待ってます。元気を出して下さい。私は主の小説が大好きです。主のおかげで勇気付けられた事もありました。主が無理せず、幸せに、元気になって下さると私は嬉しいです。 (2019年3月10日 14時) (レス) id: 9a1f04b9d9 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - あんまり無責任なことは言えないけど...私はこの作品が大好きです。更新されてたらすぐ読みにくるし、次の更新が待ちきれません。ゆっくりでいいです。またこの作品が更新されるのを楽しみに待ってます! (2019年3月10日 9時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
闇猫(プロフ) - ゆっくり休んで下さい。この作品が大好きので、また会える日をお待ちしております! (2019年3月10日 1時) (レス) id: c653d2043b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藤原 黎明 | 作成日時:2018年12月5日 18時