09−1《クリスマス》 ページ9
−成瀬side−
街中を煌めかせる色とりどりのイルミネーション。
きらきら光る大きなクリスマスツリー。
冬になると流れ出す、懐かしい定番のクリスマスソング。
道行くカップルや家族が楽しそうに笑い合っている中、俺は1人浮かない顔をして歩いていた。
「さっむ...」
誰にも聞こえないような小さな声でそう呟いて、鼻をズッとすすった後、マフラーに自分の顔をうずめる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
『クリスマス・イヴ、俺と一緒に過ごしませんか......！』
90度に体を曲げて右手を差し出しながら、片想いの相手に勇気を出してそう言ったのが、つい2週間前。
ほぼ叫びに近いお誘いにはるたは少し驚いた顔を見せた後、勢いよく吹きだす。
そして笑ってOKしてくれた。
『喜んで。てか、そのつもりだったけど？』
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「...のは良いんやけど」
チラッと自分の右手に持っているものを見る。
小洒落た紙袋に入っているのは、深い青の布地の袋に金のリボンでラッピングされたもの。
なんとも不器用に巻かれた左右非対称なリボンは、それはそれで味がある...と思いたい。
そう、OKをもらって浮かれすぎたのだろうか。
俺という奴は、「手編みに見えない！？オシャレなマフラーの作り方！」という動画に見事に惹かれ、そしてそれを作ってしまったのだ。
しかも散々な出来の。
「(だって、いや言い訳じゃないけど初めて編んだし。てか上手い下手より気持ちが大事って言うし。気持ちは馬鹿みたいにこめたしな、うん...
ってなるわけないんよなーーーー！！！)」
自分でも驚くほど出来が悪い。
なんだこれは、ちぢみか？俺だったらつけたくないねこんな不味そうなちぢみ！！
「(土壇場になって渡すのが申し訳なくなってきた...)」
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作者名：±3 | 作成日時：2020年1月13日 2時
