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「A〜!!」
「ユンギオッパ〜!!」
「こっち向いてー!!」
オッパに注意されて私も途中からマスクを着けていたのに、事務所前にはすでにファンの子達の人だかりができていた。
「っ……」
急に心臓がバクバクして、目をぎゅっと瞑って俯いた。隣で歩いているユンギオッパが周りからは見えないようにそっと背中を叩いてくれる。
以前、似たようなときにサセンから顔を叩かれたことがある。幸い顔に跡が残ってしまうこともなくその日の収録を乗り切って大事にはならなかったけど、それから私はファンと身近で接するのが怖くなってしまった。
やっとのことで事務所の中に入り、力が抜けて通路の真ん中でうずくまった。
「大丈夫か」
「はい、すみません……」
激しい動悸を落ち着かせるようにゆっくり深呼吸をしていると、少し不機嫌そうにオッパが言った。
「何が」
「え?」
「何に対しての謝罪なの、それ」
顔を上げるとオッパは悲しそうな表情で私を見ていた。
「あの……迷惑をかけてしまって」
「迷惑なんかじゃねえよ。お前、辛いなら辛いってはっきり言え」
そう言って私の頭を少し乱暴に撫でる。朝っぱらから泣きそうだ。
「あ、いたいた! お前ら、こんなとこで何してんだ」
私が口を開こうとしたとき、ちょうど今日のレコーディングを担当するスタッフさんが通りがかった。
「もうプロデューサーもいらっしゃてるぞ、早く来い」
「……今行きます」
そう答えつつユンギオッパは心配そうに私を見た。歌えるか、と目で問いかけてくる。
「大丈夫です」
小声で答えるとユンギオッパは険しい顔をしながらも頷いてスタッフさんの後に続いた。
大丈夫。大丈夫。大丈夫。
自身に言い聞かせるように心の中で唱える。オッパが私のために作ってくれた曲。半端な気持ちで歌いたくない。
大きく息をついて、オッパの後を追いかけた。
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?(プロフ) - ウラツクで一番好きなお話兼一番更新を楽しみにしてるお話です!続きが気になりすぎてはじめてウラツクでコメント残しました!笑 これからも無理せず頑張ってください! (2019年8月23日 23時) (レス) id: 7911c797b0 (このIDを非表示/違反報告)
Yuki - 更新お疲れ様です!お返事嬉しいです!はい!楽しみにしてます! (2019年6月24日 22時) (レス) id: 5ccac3abe1 (このIDを非表示/違反報告)
Yuki - 更新お疲れ様です!頑張ってください! (2019年6月19日 22時) (レス) id: 5ccac3abe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美月 | 作成日時:2019年6月16日 17時