愛して恋して ≪アバンティーズ 短編集≫

飲みすぎ注意報　*そらちぃ ページ36

「たらいまぁ」
　
　ただいまさえ舌が回らないAさんが夜遅くに帰って来た

　オレはにらめっこしていたスマホの電源を消して顔を上げる
　
　真っ赤な顔に少しボサボサな髪型

　友達と飲みに行くとは言ってたけどこれは中々な量を飲んで来た様子

　隣に座ったと思ったら彼女はうつろな目でオレを見る

「……大木くん？」

「いやそこ不安要素ないでしょ」

　はいはいそうですよと答えると彼女はふにゃっととろけるような笑顔を浮かべた
　
　一瞬小学校くらいの彼女がフラッシュバックするくらいに幼い表情だった

　酔ってるAはいつも少しだけ幼くなる気がする

　オレは彼女の頬をつつくと彼女は少し不思議そうな顔を作った

「大木くん何してるのー」
　
「大木くんAと一緒にいるー」

　そうじゃなくて、と彼女はケラケラと笑う

　少し笑ったあと、彼女は目をこする

「…そら、眠い」

　お酒弱いくせに飲みすぎるからいけないんだぞA

　…オレが言える事じゃないかもだけど

　彼女はオレの肩に頭を乗せてクスクス笑っている

「ここじゃ風邪ひくよばかA」

　しかし眠さマックスの彼女に声は届かない

　オレはまたこのパターンかと溜息をつく

　でも本当にあきれている溜息ではない

　ふと感じるときの、幸せだ。の溜息

「Aは猫か何かなのか…」

　きまぐれだ。そういう意味で届くなんて考えずに一言呟くと彼女は目もあけずに言い切る言葉に

　オレはまた溜息をつくのだ

「……私は大木そらの彼女ですよ」

拒む　*エイジ→←おあいこ　*ツリメ　みなみさんより

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す