降谷さんの愛情表現は裏返し。【降谷零/安室透】

私の家じゃない ページ18

「着いたぞ」






「……違いますもん。ここ、私の家じゃないですもん。」







窓をちらっと見るとそこには降谷さんの家の駐車場にこの車が止まっていた。









「………ほら、行くぞ。」






いつのまにかドアを開けて手を差しのべてくる降谷さんはいつもと違って昔の優しい降谷さんだった。






ふるふると首を横に振るとため息が聞こえてきたのと同時に無理矢理ぐいっと引き寄せられてあっという間に地面に足がついた。






「…話は後で聞いてやるからついてこい。」





「私は、降谷さんに話すことなんて、ない、です」








久々の降谷さんの優しさに触れて更に涙が止まらなくなる。





本当は泣くつもりなんてなかったのに。





安室さんという存在を知ってから昔の降谷さんをつい重ねて思い出してしまう。





あんなにも優しかった降谷さんが何かをきっかけに冷たくなった。





嫌いなら嫌いと、そういってくれればどれだけ楽になるだろうか。







こうやってたまに優しくしてくれるから、私は中途半端な思いで降谷さんと向き合わなきゃいけない。







本当にこの人はなにを考えているの。









.









バタン、と重たい扉が閉まる音がした。





今もなお私の手を引いて部屋に上がる降谷さんはどこか苦しそうで、悲しそうだった。






「座ってろ。」







それだけ言われてなにも言わず座ると、キッチンの方に消えていってしまった。









「…………」







この部屋も、久しぶりだなぁって。






優しくしてもらってた頃によくお邪魔してたっけ。

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