入学編 第七話 ページ9
「お断りします」
きっぱりと返事をしてやると、秋夜の目の前に並んだ彼らの顔が愕然に変わった。
模擬戦から翌日の放課後。秋夜は一条将輝と吉祥寺真紅郎に連れられて生徒会室にやってきた。
昨日、模擬戦で何かやらかしてしまっただろうか。試合はルールに則ってこなしたし、その後の専科の阿呆共は事を起こす前に抑えこんだ。生徒会に呼ばれるようなことはしていなかったと思うが、あるいは水尾会長に失礼なことをしてしまったか。
しかしそうなると、将輝と真紅郎が呼びに来た説明が付かない。ますます要件に見当がつかなかった秋夜は生徒会室に着くまでに訊ねてみたものの、二人ははぐらかしてばかりで教えてくれなかった。
嫌な予感がしながら生徒会室に入ると、水尾会長と他の生徒会メンバーが数名。そして、秋夜よりも少し大柄な男子生徒がいた。
水尾会長から彼が風紀委員長であることを聞かされた後、秋夜は彼から風紀委員にスカウトをされた。
そして、この答えだった。
「理由を聞いてもいいか？」
「単刀直入に言えば、自分は忙しいです。それに、何故自分なのでしょうか？」
「俺が推薦した」
答えは一条将輝から得られた。
「神零……と呼んでいいか？」
「ああ。俺も一条と呼ばせてもらう。それで？」
「お前が昨日の模擬戦で使用した霊子(プシオン)。一撃で違反者を止められる。これだけでも十分な抑止力になる」
一条将輝の言うことには一理ある。それを認めつつ、秋夜は目を風紀委員長に移して質問を挟んだ。
「風紀委員はどんな活動をしているのですか？」
「風紀委員は魔法使用に関する校則違反者の摘発と、争乱行為の取り締まりが主な業務になる。鎮圧が主になるだろうが、魔法が使われる前に止めることが望ましいな」
「……ならば一条の理由は弱いです。確かにあの魔法なら、違反者に対して効果は有りますが、未然に防ぐのが望ましいのなら物理的な戦闘力も高くなければ務まらないでしょう。そこはどうお考えですか？」
スラスラと遠回しに、再度お断りの旨を伝える秋夜。
これを風紀委員をやりたくないだけの言い訳に聞こえた人間がどれほどいたか。どのように感じたのかは秋夜にもわからないが、生徒会メンバーになったらしい吉祥寺が口を挿んだ。
「でも君は、相手が魔法を使う前に抑え込めるんじゃないかい？ 昨日、彼らが魔法を使う直前に冷却魔法で抑え込んだように」
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作者名：*0608 | 作成日時：2021年9月26日 11時
