入学編 第十一話 ページ13
「こんなところで油売ってていいのか一条」
「まあそうだが、お前の姿が見えたのでな」
あの試合以来、どうやら吉祥寺真紅郎や水尾佐保だけでなく一条将輝にも目を付けられたらしい。
今更ながら、沓子達の為とはいえ迂闊なことをしたなと、秋夜は遅すぎる後悔をした。
「神零は部活に入らないのか？」
「特に入りたい部活があるわけではないからな」
「そうか。まあ、何をするかは人それぞれだ。好きにするといい」
吉祥寺真紅郎と一緒にいるところを見ているせいか、何か企みがあって近づいたのだと思っていたのだが、見たところ一条将輝はそこまで腹黒い人間ではなさそうだ。
「ところで神零」
「何だ？」
「四十九院と親しいようだが、確か幼馴染だったか？」
「そうだが、何か気になるのか」
「いや、どちらの家も古式魔法の名家だった筈だからな」
『一条！』
話していたら、そこで一条将輝の胸ポケットの端末に通信が入り、スピーカーから聞き覚えのある男の声が聞こえた。
『第一グラウンドで喧嘩が発生したと通報が入った。負傷者が出る前に対処してくれ』
「了解！」
端末をポケットに戻すと、一条将輝は申し訳なさそうな顔になった。
「早く行ってやれ」
「ああ、またな」
一条将輝が駆け足で現場へ急行していく。
小さくなっていく彼の背中を、秋夜は見えなくなるまで見送った。
沓子はボート部に入部することを決めた。愛梨はリーブル・エペー部に、栞はリーブル・エペーかスピード・シューティングで迷ったようだが、新しく挑戦したいという欲求からスピード・シューティング部を選んだ。ちなみに秋夜は、試合で専科の人間に勝った噂を嗅ぎつけたいくつかの競技クラブから勧誘されたが、丁重に断った。因みに水波は入らないようだ。
明日からも勧誘期間は続くが、沓子達は明日からは部活に本格参加するという。
練習でも力を発揮できるようにしたいから、と沓子からＣＡＤの調整を依頼され、秋夜は自分のＣＡＤの調整をしながら準備中の彼女を待っていた。
秋夜の家は三人暮らしでも十分大きいとさえ感じる一軒家に加え、地下室を改造した作業室が設けられている。主に秋夜が魔法研究をしたりＣＡＤの調整をする為に使用しており、個人レベルでは整えることも困難な、最新鋭のＣＡＤ調整装置が備わっていた。
本家はこの家より、150倍程大きい。
『秋夜、入るぞ』
「OK」
部屋の外から聞こえた声に答えると、沓子が入って来た。
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作者名：*0608 | 作成日時：2021年9月26日 11時
