入学編 第十話 ページ12
「そうでした。沓子兄様に爪牙が向けられる前に秋夜兄様が何とかしますよね」
「秋夜。ちゃんと守ってくれるのか?儂を」
「無論だ。沓子は最優先だ。其れに水波も最優先に入っている。ついでに愛梨や栞も無視はしません」
秋夜は入学から二日ほどは「一色」、「十七夜」と呼んでいたが、模擬戦を終えて一緒に帰った時に「苗字は長くて呼びづらいと思うから名前で呼んで欲しい」と言われ、お言葉に甘えた次第である。
秋夜は沓子と水波と一緒に家を出発した。
生徒会や風紀委員会、部活など、魔法科高校という特殊な学校にも昔からある学生らしい活動は存在する。新入生は進学した際、そうした活動も新しい学校生活の一つの楽しみとして胸を弾ませているあろう。
各競技クラブに所属する在校生は、優秀な技能を持つ新入生を欲していろいろ準備をして来た。
新入生勧誘活動。
これから一週間は半ばお祭りのように騒がしく、時に過剰な勧誘行為が元で争いにまで発展しかねない日々が始まるのだった。
(いろいろな部活があるようだな)
テニスや剣道のような昔からある競技クラブから、特定の競技から派生した魔法競技まで、現代の競技クラブは達也が想像している以上に多くなっている。
例えば、名前呼びになった愛梨が得意としているリーブル・エペーはフェンシングが元となった魔法競技だ。スピード・シューティングはクレー射撃が元になった魔法競技であり、魔法を加えただけで大きく競技内容が異なりルールも多少変わって来るが、見応え十分な競技も多くて世間の評判も良い。
そうしたところから部活に所属する生徒も多くいるものの、秋夜はどこの部活にも入る気はなかった。
「何をしているんだ?」
勧誘風景を眺めていたら声が掛かった。
腕には腕章、胸ポケットにはボイスレコーダーか通信機(もしくは両方の機能を備えたものか)らしき端末を入れた、一条将輝だった。
三高は魔法実技を学ぶ校風故か全体的に血の気が多く、風紀委員会はそうした無法者を取り押さえる為に実戦能力の高い人間を欲している。主席入学する人間に求められるのは知識よりも実技能力であり、第三高校に首席入学した生徒は風紀委員会に入るのが通例らしい。
十師族が風紀委員会に入ったのだから余程の命知らずでもなければ拘束されることはないだろうが、この期間は優秀な人間欲しさに過激な言動になりやすいもの。彼の出番も多くなるだろう。
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作者名:*0608 | 作成日時:2021年9月26日 11時