入学編 第九話 ページ11
水尾佐保。
彼女の考え方や信念には思わず関心を寄せられた。生徒会長だから、というのもあるかもしれないが、きっと彼女自身の性格から来ている本音であろう。
一色愛梨が信を置くだけのことはある。
秋夜は水尾佐保に対する警戒レベルを下げた。
朝早くに出るであったり、外泊などで家を留守にしているなどが無い限り、神零家は基本的に沓子を含めた三人揃っての朝食が習慣になっている。
家庭によってはテレビを見ずに食事をするというところもあるだろうが、朝の情報というのは忙しい身である彼らにとっては一番の情報源(無論、他の入手する術はあるのだが)であるので、情報の為にはテレビは欠かせない。ただ、テレビの情報も関心が無ければ右から左へ流しているというのが彼らのスタンスであった。
しかし、今朝のニュースには意識を傾けずにはいられない話題だった。
「……また反魔法師派による暴行事件ですか」
眉を寄せて、水波が不快げに呟く。
魔法が現実の技術となってからというもの、魔法の技術は徐々に社会に溶け込み、分野によっては日本の社会産業を発展させるまでになった。
しかしながら、魔法の利便性が証明されている一方で、魔法に対して批判的な目も向けられている。
魔法を使える人間が優遇されてそうでない人間が不遇な目に遭って差別を受けている、という実際にそのような差別が起こっている事実はないのにあたかも事実であるかのように広がったり、魔法が暴走して自分たちに牙をむく前に魔法などという危険な技術、ひいては魔法を使う魔法師にんげんを排除しようという動きが、時代と共に深刻化している。
そうして差別を無くすことを訴える反魔法師団体が誕生し、全国各地で活動が取り沙汰されては、時に過激な行為が暴行事件に繋がることも珍しくはなかった。
反魔法師派による過激な行動は今に始まったことではないとはいえ、自分たちが住んでいる地域で事件が起こったとなれば無視もできない。秋夜と沓子も、水波と同様に不快に思っていた。
「儂等三高の生徒に被害はないと思うしのぅ」
「俺の耳には入っていないが、いつ襲われても不思議ではない」
「秋夜兄様や沓子姉様は当然として、達也兄様達に危害が及ばないといいですが……」
「水波。それは杞憂というものじゃよ」
沓子の言葉に水波はきょとんとしてしまったが、やがて理解してか納得顔になった。
「分解と再生があるからな。達也には」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：*0608 | 作成日時：2021年9月26日 11時
